story3:朱音という女

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story3:朱音という女

若手女優清瀬朱々..近藤朱音 モチロン見た目のみならず 男たちを惹き付け翻弄させる 魅力が溢れ出ている。。 それがどんな我儘でも可愛くて 不思議と放っておけない。。 それは彼女の演技なのか本性なのか 分からない。。 男は皆、騙される。。? あぁ。。こういう女に生まれたかった。。 -頑張って頑張って手に入れた女優。 私はヤンキーの娘、近藤朱音じゃなくて 女優清瀬朱々。 私は欲しいものはすべて与えて貰える 沢山可愛がってもらう女になるんだ‼ 誰もが羨む女になるんだ‼- しかし女優になるまでのコドモの頃 かなり辛い人生を歩いていた。 両親ともに県下きってのヤンキーで 父親は暴走族の総長だった。 母親は族のメンバーだった。 二人は何とか更正して一緒になり 朱音が生まれた。 朱音の下に妹も生まれたが 両親は生活設計を安定させるに 昼夜共働きで二人とも児童施設に 預けられることが多く 愛情を注がれる時間は少なかった。 朱音が小学校4年になると 両親は“肉楽園”という焼肉屋を 開店させた。 ビミョ~ ヤンキー仲間繋りで口コミで そこそこ繁盛するけど 柄はあまりよくない店だった。 学校から帰ってきた朱音は 店の手伝いをさせられていた。 商売が波に乗ると両親は 仲間と遊び歩くようになった。 経営状態はギリギリを辿っていた。 妹は両親派だったが 朱音はどうしても ソチラの世界に馴染めず 真っ当に育ってしまった。 …こんな。。。 ヒョウ柄の派手な服じゃなくて 可愛い女のコの服が着たい。。 皆と仲良く遊びたい。。 習い事も通ってみたいのに 全然聴いてくれない。。 普通のパパ、ママのいる家に 生まれたかったよ。。… 朱音には常に哀しさと 口に出せない不満が募っていた。 元ヤンの娘であるのは 嫌が負うでも有名だったから 周りが恐れなして友達はいなかった。 だから大人しい、可愛いのに どちらかというと暗い少女だった。 やがて両親は密かに反抗心を持つ朱音に 辛く冷たく当たるようになった。 機嫌が悪ければ手や足が飛んでくるのは 日常茶飯事。 怖いのでなるべく逆なでしないよう 素直に必死に店の手伝いをした。 年頃になってきた朱音は TVや雑誌を見ながら 芸能界.女優に憧れるようになった。 中学3年の時に進路相談で 両親に打ち明けた。 両親は高校に進学するより店で 働けと言ってきていたから 「オメェ~なかなか可愛いからなれるかもな‼じゃあ女優になって稼いで来いよっ‼」 「アダルトビデオの女優なら伝あんじゃない?アイツに聴いてみよっか‼」 親のくせに本気でアダルトビデオ出演の 話を進めていった。 「朱音‼バリ稼いでくれよっ‼」 …その女優じゃないっ‼馬鹿親----っ… 先生からの説得、推薦もあって 一応、県立高校に進学させてもらったものの …もう‼こんな親の傍にいられないっ‼… 朱音、17歳 ついに家を飛び出した‼ だけど特に行くあてもなく さまよいながら 。。ふと思い出した。 比較的近場に昔からたまに会ったことが あり、とても優しくしてくれた 遠い親戚がいた。。 柄の悪い焼肉屋開店の日も お祝いに来てくれて 軌道に乗るまでよく一家揃って 食事に来てくれた。 両親が捕まっちゃったり どうしでも手が離せない時に 何度かお泊まりで匿ってくれた。 パパのお姉さんの旦那さんの お兄さんのところ とても優しくしてくれた人たち。。 近場といってもお金も持っていないから さまよいながら3時間かけて 歩いていった。 それが羽沢家だった。 羽沢家は朱音のこと 家庭環境をずっと懸念してくれていた。 「朱音ちゃん‼よく来たね! 心配ないからね‼」 いきなりやって来た朱音を温かく 受け入れてくれた。 それが羽沢駆の実家だった。 駆は既にアイドルデビューしていて 離れて暮らしていたけど 朱音が来ているのを知って 飛んで帰ってきてくれた! コドモの頃から歳の差があるにも関わらず 駆と二人のお姉さん共々 よく朱音と遊んでくれた。 駆は一人だけ男の子なのに 女のコ遊びも平気で付き合ってくれた。 外でも元気に遊びまわった。 勿論、可能な範囲で勉強も見てくれた。 友達がいなかった 朱音の大事なお友達替わり しかし羽沢家だけで朱音をみるのは やはり負担と限界もあって 駆の父親の両親の家や、兄妹方の家にも お世話になることになり。。 当然朱音もこの人たちに ずっと頼ってはいけない 迷惑をかけてるのは重々分かっていた。 埼玉から東京に毎日通いつめ 女優になるために 住み込みで入れてもらえる 芸能プロダクションを歩いて 探してまわった。 やがてはネットカフェなどに泊まり わざと帰らない日もあった。 プロダクション探しは勿論甘くはなくて 何?この素人が‼ 冷たく門前払いも沢山喰らった。 怪しいところに斡旋されそうにもなった。 空いてる時間にはアルバイトもした。 引き受けてくれるプロダクションが 見つかるまで半年掛かった。 そこは優しい社長夫妻で 朱音の事情を聴いて プロダクション社長宅に 暫く住まわせてもらえることになった。 アルバイトで貯めた僅かな御礼を置いて 羽沢家を後にした。 プロダクション社長宅に住み込み お世話になりながら 女優になる為のレッスンを受け 家のお手伝いはモチロン アルバイトもしながら 定時制高校にも通わせてもらい 女優やモデルへの道のコンテストを 沢山受けた。 そして19歳の時に 映画主演のコンテストで抜擢され 清瀬朱々の名で女優デビューを果たした。 ※※※ 都内最高級ホテルのスィートルーム 眼下には都会の灯りが一面瞬いている。 キャミソール姿の朱音がソファーに座り ワイングラスを傾けていた。 その姿は妖艷で麗いのある横顔。。 「朱々。。そろそろ来いよ」 ベッドの方から男の声がした。 朱音の本命彼氏、青山景博 IT企業blue‐mountain社長 「今日はしたくないんだけど。。」 「何言ってるの? 俺たち忙しくてなかなか会えないのに。 今日はデキナイ日なの?」 「。。したくない日だってあるんだもん‼」 「ご機嫌斜めなのか? 今夜の創作料理の店、気に入らなかった? 何かあれば店に忠告するよ?」 「そんなことしなくていい。。」 …いい飯食わせて貰っておいて 自分だけ満足してそれはないだろ ホント我儘だよな… 景博はベッドから起き上がり ガウンを羽織って朱音の傍に座ってきた。 「なーんて、そうやって上手に 焦らすんだよな。朱々は」 景博は手酌でグラスにワインを注ぎ 一気に呑み干した。 「景博さん。。私のことなんて 愛していないくせに。。」 「今さら何言ってるの? 俺には朱々しかいないんだよ? ちゃんと愛してるよ。。」 景博は朱音の肩に手をまわしてきた。 「今日は。。パズドラがしたいの」 「。。はぁ?パズドラ?」 「パズドラしよ‼」 「何で俺がパズドラしなきゃならないの? 笑わせてくれるね。」 「今日はパズドラがしたいのっ‼」 「このスィートルームでパズドラってか? 聴いたことないよ。 流石にココでスマゲーするなんて 気にはなれないな‼」 「じゃあ帰るっ‼」 朱音は立ち上がったが咄嗟に景博は 力づくで朱音をソファーに押し倒した。 「帰すわけないだろ?」 「イヤッ‼辞めてっ‼」 景博は無理矢理朱音の口唇を激しく奪い、 キャミソールの中に手を突っこみ Fカップをわしづかみにしてきた。 「朱々のココもアソコも全部俺のモノ‼」 「ダメッ‼今日はしたくないっ‼」 「誰のお陰で君んとこの焼肉屋が デカくなれたと思っているの? あんなロクでもない焼肉屋が‼」 景博は勝ち誇った目線で 朱音を見下ろした。 「君にいずれは 俺の嫁になって貰う条件で 肉楽園をヘルプしてあげたんだよ。 忘れないで欲しいなぁ。」 「。。だってあの時は」 朱音の眼が涙で潤んだ。 「俺はもう君を朱々じゃなく 朱音って呼びたいんだよ。」 「それだけは辞めてっ‼」 「いい加減に認めてやってよ‼ 俺たちはそういう仲なんだからさ~」 …私はあくまでも清瀬朱々なの‼ 誰からも簡単に朱音と呼ばれたくないのっ‼ 実はアンタにもねっ。。 だって、最初から愛してくれてなんて いないもの… 景博は手を朱音の下半身に忍ばせた。 「ほら、俺が欲しくて堪らないって。。」 「イヤッ。。イヤだってば。。」 忍ばせた手を払いのけようにも 巧妙に攻めてくる。 景博が当然上手だった。 「朱音。。身体ってのは正直なんだよ。。」 「あっ。。んっ。。イヤだってば。。」 妖艶な吐息を漏らしてしまう。 朱音の身体の力が抜かされてゆく。 景博は口唇を熱く首筋を這わせながら 耳元で囁いた。 「朱音は何があっても俺のもの、 絶対に離さないからね。。」 …朱音って言われたくないよ… 朱音は観念して切なげに眼を閉じた。。 …青山景博は私の弱味を掴んで 自分のモノにしたいだけ。。 それは近藤朱音じゃなくて 女優清瀬朱々を。。 そんなの初めから分かっている。 もう逃れたい。。でも無理なんだ。。 理由はともあれ助けてもらった弱味が。。 私の弱味を一切何も知らずに 可愛がってくれて抱いてくれるのが、 医師の亮介とパイロットの翔平。 この人たちとの未来はないけど 一時のオアシスのような存在だから この二人もなかなか捨てがたい。。 遥か南の島にいる遠距離恋愛の リゾートホテルの御曹司、沫森君。 超お坊っちゃま‼ ロケ中に紹介してもらったんだけど リゾートの夢のひとときで 終わらなかったんだよね。。 独身でいい人だけど まず簡単に会えないもん。 そばにいてくれる人じゃないと ダメなの。 皆、バレないようにして来てるから さすがの景博も 多分これは知らない。ハズ 私はただエリートといわれる人種の イケメンにリッチな思いを させてもらいたいだけなんだ。。 男なんて単純だから エッチで返してあげれば こっちのモノ。 だけど。。 こんなの恋愛じゃないのかも。。 互いが自分本位の欲望のハケグチなだけ。 私も景博と変わらないんだ。。 ロクでもない。。私 女優清瀬朱々。。 近藤朱音。。 私。。ずっと、こんなこと 続けていくつもりなの。。? 風浦大樹かぁ。。 正直どう見てもブサ男‼ いい歳して何なの?あの男‼ でも、よく見るとコアラ顔なんだよね。。 いや‼崩れたコアラだよ。 クズコアラだ‼ 笑っちゃう~ だけど。。 私、動物のコアラ大好きなんだ。。 初めてヤツに会ったあの日は 何だったのだろう。。 初対面のヤツに、 いきなりあんなに熱くなっちゃった 私って。。 そして。。 実は。。何だかあの日のパズドラ メチャ楽しかったんだ。。
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