story5:夢ごこち

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story5:夢ごこち

―大樹がオカシクなってるぞ‼― ほほえみ不動産勤務中 大樹はパソコンを叩きながら ニヤ~ヘラ~ニヤけっ放し。。 元から愛想はいいから余計に気味悪い。 会長夫人ひさよが大樹の傍に寄った。 「大樹、アンタどうかしちゃったの? 何か悪いモノでも食べたんじゃないのかい?」 「いや、何も‼フツ~っすよっ‼」 ニヤ~ヘラ~ 「ニヤニヤヘラヘラ気持ち悪いんだよっ‼」 夫人は大樹の頭をパン‼と叩いた。 「そ~すかぁ?痛いなぁ~」ニヤ~ヘラ~ …だって憧れの清瀬朱々さんと 二人で会えることになったんだもん‼ 笑わずにはいられないっすよ~♪… …大樹、もしや朱音ちゃんと何か? ま、我慢出来ずに喋ってくるだろ…苦笑 広美も自分のデスクから 大樹の様子を伺っていた。 お昼になった。 「広美さんっ‼一矢さんっ‼ 昼飯行きましょうよっ‼ 今日は、俺がご馳走するっすよ‼」 今日は大樹がランチに誘ってきた。 …ほぅら、来ったな―――――――っ‼… 3人で近所のファミレス ジョナヤンに行った。 大樹、我慢の限界、カミングアウト‼ 喜びは皆で分ち合お―――う‼ 「え――――っ‼マジでっ」 「リッツ.カネイル.ド.ホニャラァ? あ――長っ‼2年先まで予約取れない 超豪華フレンチレストランだって テレビでやってた‼ 一生に一度の至福のレストランだって‼ よく取れたね――――っ‼ 主人とも死ぬまでに一回は行きたいねって 言ってるよ‼」広美、超興奮気味‼ 「で、例の彼女と二人で行くわけ?」 一矢は相変わらずどんな状況、話にも冷静。 「そうっ‼ついに俺にも奇跡が舞い降りてきたんだべっ‼うっひょ――――――っ‼」 大樹の気持ちは最早そのレストランに 飛んでいってしまってる。 …その店大樹には絶対似合わね―――な‼… …大樹。。それダイジョウブ?… 広美、一矢。。心配でタマラナイ ※※※ 大樹、奇跡の夢のような日がやって来た‼ 大樹、アパートの自室で部屋じゅうに 着るものを引っ張り出して 悪戦苦闘していた。 店に見合うようなスーツがない。。 リッツ.カネイル.ド.ホニャラポワン.ムッシュ.コージ ―当店ご利用のお客様は正装、フォーマルにてご来店お願い申し上げます。― 「正装ったら。。これしかないべ‼」 礼服、真っ黒のスーツを選んだ。 白いタイが見当たらない‼ 去年、確か同級生の披露宴で つけたハズが。。 あ、あの時はナオトに借りたのか~ …黒でいいかっ‼… 待った‼葬式じゃねーべっNG その時、誰かがやってきた‼ 誰かと思いきや一矢、心配して来てくれた。 「やっぱりな‼お前、マジそれで行くつもり?それじゃ葬式だぜ?」呆れた。 「い。。いや、まさかね、ガッハッハ」 大樹、笑ってごまかした。 「お前には少しキツイかも知れないけど コレ貸してやるよ‼ ブランドもんだから破くなよっ‼ 汚すなよっ‼」 一矢は自分のフォーマル仕様 光沢濃紺色のオシャレな スーツ一式を持ってきてくれたのだ‼ 「有り難え~‼」 「カード持ったか?」 「昨日、銀行から卸してきたべ‼」 「バカッ‼あーゆー店は カードでスッと支払いするんだよっ‼ 俺たちの呑みと違うんだよっ‼ 現金ごそごそ出すなんて邪道だよ‼ しかも朱々さんの目の前で。。 あーみっともねぇっ‼」 一矢、想像してブルッと震えた。 「一矢さ~ぁん、マジありがとうっ。。」 大樹は一矢を熱く見つめた。 「あの女優清瀬朱々と会うと思ったら コッチだって黙っちゃいられねーよっ‼」 「一矢様――――っ‼愛してるっ‼」 大樹、一矢に熱い抱擁。。 「やめちくれぇ―――――――っ‼」 ※※※ 豪華ディナー初デート‼ 大樹が金座のその店の前で待ち構えてると 朱音はタクシーに乗って現れた‼ この超豪華5つ星レストランに見合う。。 可愛さと気品を備えた完璧なドレスアップ、 さすが女優‼ 美しい清瀬朱々が降りてきた‼ 「お待たせ。入りましょ。大樹さん」 …あぁ。。目の前に清瀬朱々‼朱音さん‼ 俺は夢を見ている。。 やっぱ綺麗だ。。可愛い。。お姫様だ… ドアマンに扉を開けてもらい店内に入ると 長身細身の洗練された?ウェイターがうやうやしく出迎えてくれた。 「いらっしゃいませ。 ご予約の風浦様でございますね。 お待ち致しておりました。 私ども、リッツ.カネイル.ド.ホニャラポワン.ムッシュ.コージにご来店有難うございます。 初めてのご来店でいらっしゃいますね。 至福のディナーを心ゆくまで ご堪能くださいませ。どうぞ」 席へ案内された。 …もしや、同伴のお客様は 女優の清瀬朱々ってか‼ この男性のお客様、まさかっ‼ コイツ。。か、彼氏? イヤイヤ、貢君だろ?… ウェイターの内心の叫び。。 宮殿のような店構え 内装はライブキッチンも視界に入りつつ ゆったりと気品あるクラッシックな雰囲気。 個室プランは更に割増になるから 大樹、もうそれ以上手配不可能。。 スンマセン一般テーブル席。 …私。。 芸能人、女優なのに個室じゃないんだ。。 スクープされたらオワリじゃん‼ しかもクズコアラとなんて… 朱音は愕然とした。。 ―以下料理内容などは素人妄想メニューとなります。ご了承くださいませ。― 「風浦様、お飲みものは如何されましょう?」ソムリエの男性が来た。 「私ども、リッツ.カネイル.ド.ホニャラポワン.ムッシュ.コージの今宵のお薦めは此方でございます。」 ドリンクのメニューリストを手渡してきた。 …うわっ‼豆粒みたいな小文字 しかもアルファベット、フランス語? 薄暗い店内、灯りは揺らめく卓上キャンドルライトだけ。文字見えねぇべっ‼ ワインリスト、原産国名と値段しか分かんねぇべ‼ グラスワイン一杯2000円以上かよっ‼… 大樹、パニック‼ 「お、お。。お、お水で」 「あら?大樹さん、お酒お好きなくせに?」 朱音があおってきた。 …そりゃ呑みてーけど。。… 「風浦様。お酒がお好きでしたら一杯くらいよろしいじゃありませんか? 折角の私どもリッツ.カネイル.ド.ホニャラポワン.ムッシュ.コージのディナーでございますよ? では此方のワインは如何でございましょう? 今宵お出しするお料理に大変合う銘柄でございますが。」 口妙巧みに薦めながらメニューを指してきたけどまったく分からない。。 しかもグラス一杯3000円って。。 「では、私はお薦めをお願いしますね‼」 朱音はお薦めをさっさと注文してしまった。 …うぅっ、ビールならもう少し安いべか? どんだけするんだっ?… 大樹は、ページを変えてビールを探した。 …あ‼いつものヒノデビールのスーパーカライがあったっ‼ 一杯1800円‼ 何が違うんだべっ?ってこれが一番安いんじゃん。。… 結局大樹はヒノデビール.スーパーカライを注文した。 「私どもは、おビールについてはグラスのみのご提供となりますが、よろしゅうございますでしょうか?」 …グ、グラスで1800円? いつもの500㍉缶400円也。。… 大樹、涙目になる。。 「ふうっ。。お、お願いします。。」 代わって、またウェイターが寄ってきた。 「風浦様、私どもリッツ.カネイル.ド.ホニャラポワン.ムッシュ.コージでは、 郷田オーナーシェフ今宵お薦めの一品を ご用意出来ますが如何でございましょう?」 …フルコースなのに、何じゃそりゃっ… 「お早めにご来店のお客様限定で 本日北海道最北端の利尻島、礼文島から空輸入荷の最高級ホタテ貝、牡丹エビ、雲丹の盛合せスペシャルカクテルをご用意出来ますが?」 「うわ―っ‼朱音、是非頂きたいっ‼」 朱音の眼が輝いた‼ 「ココ、金座で最北端の魚介類を この抜群の鮮度でお出し出来るのは 私どもリッツ.カネイル.ド.ホニャラポワン.ムッシュ.コージだからでございますよ‼ 是非お連れ様を喜ばせて差し上げてくださいませ‼」 「よ。。よぉ~~っ‼ポンッ‼ よぉ~喜んでぇ‼ 喜ばせて差し上げまっすぅ~」 大樹の眼はオホーツク海を泳いでいた。 カクテルっての?一皿5000円。。 大樹。。ココに心あらず。 しかし頼んでヨカッタ? …新鮮!肉厚!プリプリ!極上っ‼ こんな旨いホタテ、エビ、雲丹。。 初めてだべっ‼ 居酒屋うまいもん牧場の刺身と違――う♪… 当たり前でございます。 乾杯の一杯、 別注文極上最北端シーフードカクテルの後 コースが始まった。 〇私ども、リッツ.カネイル.ド.ホニャラポワン.ムッシュ.コージ 歓迎の前菜は、京都から仕入れました 鱧のテリーヌ、キャビア添えでございます㊤ …立派な白亜のお皿の真ん中に、 チョコっと何やら模様が。。 鱧の白さと皿が一体化、 テリーヌってコレ?ペロッと2枚かよ‼ 皿だけ出てきたのかと思ったべ。。… 〇私ども、リッツ.カネイル.ド.ホニャラポワン.ムッシュ.コージ極上の逸品 フォアグラのスープ仕立、トリュフ添えでございます㊤ 「うわぁ。。綿あめみた~い‼ フォアグラのお味がしたと思ったら お口の中で溶けた~♪♪♪ こんなお料理初めて‼素敵ぃ~っ‼」 朱音、大感激‼ 〇私ども、リッツ.カネイル.ド.ホニャラポワン.ムッシュ.コージ 本日のお魚料理は三重県から仕入れました 伊勢海老のグリルに愛媛県宇和島産真鯛の ポワレでございます㊤ 「朱音、もう一杯いいかな? リストに朱音の好きなワインがあったの!」 「呑んで~♪呑んで~♪呑まれて~♪」 大樹、堀内孝雄になり もうどうでもよくなった。 〇私ども、リッツ.カネイル.ド.ホニャラポワン.ムッシュ.コージ本日のメインディッシュは 当店契約牧場ブランド悩める子羊のソテー、 添えは北海道朝里産の朝採りアスパラガスと、青森県産幻のトウモロコシ嶽きみ添えでございます㊤ …何でいちいち店名を。。ウザイ。。クドイ 今夜、絶対ウナサレル。。 リッツ.カネ、カネイル―ッ どんだけ―っ金要る店だべ―――‼… 海原雄山が出てきたら、どんだけ―っ‼ ※※※ 再びウェイターが寄ってきて こっそり朱音に声をかけてきた。 「お客様、大変失礼かと存じますが 清瀬朱々様でいらっしゃいますね?」 「。。はい」 「オーナーシェフ郷田から 特別に歓迎の一品をご提供させて頂きます。」 …凄っ‼女優と知っただけでかぁ。。… 「まぁ‼よろしいんですか?」 朱音は顔をほころばせた。 「私ども、リッツ.カネイル.ド.ホニャラポワン.ムッシュ.コージオリジナル、フランス直送エスカルゴでございます。」 「えぇっ⁉郷田オーナーシェフの フランス時代のお店のエスカルゴって 世界一って言われてますよねっ?」 朱音、大感激‼大興奮‼ …エスカルゴって、確かカタツムリだべな? よく爺ちゃんが捕ってきて焼いて食っていたべな。。 いゃあ、サービスなら、酒の方が嬉しいんだけどなぁ… 大樹、卑し過ぎっ 「お二人の記念すべき日の オーナーシェフ郷田からの 囁かな気持ちでございます。」 …二人の記念すべき日って? 今夜は朱音さんと記念すべき日ってか‼ 二ャ――――ッ… 大樹、魂抜けて夢ごこち。。 朱音も、目の前の大樹の存在は忘れて お料理に夢ごこち。。 やがて朱音の為に作り上げられたような デザート、可愛いスイーツは オーナーシェフ郷田が直々運んできた。 大樹は蚊帳の外。。。 朱音とオーナーシェフ郷田で話は盛り上がっていた。 コーヒーが出されて夢ごこちディナーは、 お開きとなった。 その時、外から3人の男性客が入店してきた。 ―その中の一人。。朱音の彼氏青山景博‼― 大手電気メーカーパナトニック社長と秘書に伴っていた。 景博は通りすがり、たまたま一般席テーブルに視線をやった。 …えっ?。。朱々?… 朱音は気づいていない。 景博はブルーマウンテン山頂で 猛吹雪に襲われているかの如く凍りついた。 …同席の男。。一体誰だ?… 景博は二人のテーブルに視線をやりながら 誘導されるまま個室に入っていった。 …朱々。。俺ともまだこの店に来たことないのに誰と来てるんだよ?… 景博は大手電気メーカーパナトニック 社長の大事な接待の為、今はどうにも出来ない。身動き出来ない。 大樹は意識朦朧としながら 清水の舞台から飛び降りる支払いを済ませて 朱音は景博の目撃を知らぬまま 二人は店を後にした。 ※文章内の解説 ㊤→上から目線の表示だよん!
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