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story6:こんなヤツでもいいじゃない
二人は夢のようなディナーを終えて
リッツ.カネイル.ド.ホニャラポワン.ムッシュ.コージを後にした。
さてココで問題です!
長ったらしい店名は
何回出てきたでしょうか?(笑)
筆休め~退場~
すっかり日も暮れて金座の街は
ネオンが煌めいているけど、
まだ夜の7時半過ぎくらいだった。
朱音が一歩前に二人は
ブラブラと歩き出した。
「あ、あの、朱音さんっ‼パズドラ‼」
大樹は朱音を呼び止めた。
「いいよぉ、パズドラしたいよね?」
「じ、じゃあマン喫にでも行く?」
「はぁ?」
「まだ呑めるなら呑み屋でもいいけど?
俺はまだまだ余裕~‼」
…互いにこんなフォーマルで
居酒屋なんて入れるワケないじゃん‼…
「。。ホテル、予約してないの?」
朱音は呟いた。
「ホッ、ホテルゥ――――?」
大樹は叫んでしまった‼
通行人がビックリして二人を眺めていく。
朱音は慌てて大樹を近くの
路地裏に引っ張り込んだ。
「辞めてよっ‼ホテルなんて叫ぶの‼
超恥ずかしいっ。。」
朱音は凄まじい形相だ。
「だって。。。」
…朱音さんの。。
毛皮のショールから。。
伸びる長くて妖艷なうなじ。。ろくろ首か
ちらり見える鎖骨。。
ホテルなんて行ったら
俺、君を完璧食っちゃうっすよ?
イヤイヤ‼こんな綺麗な妖精、天使
お姫様に簡単に手を出してはならぬ‼
バチが当たるべ‼
傍にいるだけで奇跡なのに、
ンなことしたら地球がオワッちまうべっ…
大樹、エライ⁉理性勃発‼
「だ、だって、今日、初デートで。。
その今、夕飯食ったばかりで。。
ホッ、ホ。。ホ
それまだ早すぎませんかねぇ?」
「朱音のデートはね、ディナーの後は
ホテルのスィートに行くのが決まりなの‼
バーラウンジでひと息入れてからでも
いいんだけど?」
愛くるしい瞳で見つめてくるでないか‼
「ス、スィー、バー‼いきなりすかっ。」
大樹、タジタジ
「それ、朱音にはフツーだけど?」
いやいや、フツーじゃないよ?
…やっぱいきなりホテルなんてヤバイっすよ…
「。。じ、じゃあ、バーラウンジ行く?」
「バーラウンジでパズドラ出来るわけないじゃんっ?」
…ホテルなんてラブホくらいしか知らねって。。別にラブホにも詳しくねぇべ…
「。。じゃあ。。その、ラブホ行っちゃいますかっ?パズドラ出来るっすね?」
…こんな露骨にラブホなんて言ってくるの
有り得ねぇ―やっぱクズコアラだ…
「ねぇ?私を誰だと思ってるのっ?
女優の清瀬朱々だよ?
ラブホなんて行けるワケないじゃん?
ロケならともかく」
…俺たちのこのイデタチじゃ
しかも女優は
オイソレと何処でも入れないんだ。。
だべな…
「じゃあ、どうしたら。。」
「ゴメン、アンタとパズドラ
やりたかったけど
ホテル予約してくれてないなら
今日は帰るっ‼
ごちそうさまっ‼」
朱音は大通りに駆け出て
タクシーを拾おうとした。
「チョッ‼チョット待ってっ‼」
追いかけながら、ふと大樹が大通りの向こうに目をやると
衣料品量販店ユニシロが見えた。
大樹、閃いた‼
「これだべっ‼朱音さんっ‼」
即座に朱音の手を引いて
交差点を駆けて渡った。
「何よっ‼何すんのよっ‼」
二人がユニシロ店内に駆け込むと、
間もなく店内閉店のアナウンスが
音楽と供に流れていた。
「ヤベッ‼閉店だっ‼
何でもいいから買うんだっ‼」
「何を買えってのっ?」
「着替えだべっ‼
君のその素敵なドレス‼
俺、借りものスーツ‼
呑み屋もマン喫も入れないじゃん‼」
「え―――――――っ?イヤだっ‼」
「レジも閉まっちゃう‼何でもいいからっ」
二人は手当たり次第で衣類を購入し、
会計してから閉店しかかっている
店内更衣室で即座に着替えた。
大樹。。海辺か?Tシャツと半ズボンに黒の革靴
朱音。。就活?白いリクルートブラウスに
グレーの膝下スカートに可愛いピンヒール
足元の買い物までは間に合わなかった。
「何なのっ?何でこんな格好しなきゃならないのぉ‼」
朱音は、嘆き悲しんだ。
「これで完璧だべ‼
居酒屋でもマン喫でも行けるべっ‼
パズドラやれるべっ‼」
…俺って、もしかして凄いヤツ?…
「更衣室で着替えて
こんな姿有り得ないっ‼私はっ‼」
「分かってるかららダイジョウブ~‼」
大樹は朱音にシーッとやった。
愉快そうな表情している。
…こんな着替えなんていつ以来?
辛かった下積みの頃、思い出すじゃん。。
プロダクション探す時は
目一杯オシャレして
バイトに行く時は着替えて。。
それも女子トイレで。。…
朱音は悲しくて
でも何だか楽しくなってきて
思わず笑いが出てしまった。
…あ。。朱音さん、初めて笑ったべ‼…
ヨッシャ―――――――ッ‼
二人はマンガ喫茶に入って
パズドラに熱中した。
ひと息入れながら
自然に会話も続くようになった。
深夜になり大樹の小腹が空いてきて
居酒屋に入った。
ガヤガヤ賑やかな店だから呑みながら
パズドラを楽しんだ。
気がついたら終電がなくなっていた。
…ゲゲッ‼電車で帰れねぇ。。…
「朱音、もう眠―いっ。。」
アルコールも手伝って本格的睡魔が
二人を襲ってきた。
「ネットカフェ行く?
あそこなら何とか寝れるべ?」
「イヤッ‼メイク落としたいの‼
シャワーも浴びたいの‼」
「じゃあ帰るべ。タクシー捕まえてくるわ」
「ホテル―っ、スィートで寝るぅ」
大樹に貧乏神が舞い降りた。
―お前にはスィートルームまでは
無理だよなぁ。。
リッツ.カネイルで
どんだけ飛んだか分かってるかぁ?。。
今までキャバクラで散々使ってたしなぁ。。
残念だねぇ。。可哀想に
ハーッハッハッハ――‼―
…情けないべっ‼ゴメンッ‼…
大樹は通りでタクシーを捕まえたけど
朱音は頑として乗らない。
タクシーはシビレを切らして
他の客を乗せて走り去った。
「もぉ‼どうしたいのぉ?」
大樹、困りながらも朱音のこの我儘が
可愛くてならない。
「ホテル―っ。。
もう、スィートじゃなくていいよぉ~
でもラブホはイヤッ‼」
もしや、貧乏神の囁きが聴こえたってか⁉
大樹、酔いが覚めて
ギンギラギンさりげなくない。。
結局歩いていける範囲の最高級ではないけど
シティホテルのスィートルームが空いているのをスマホで検索して行くことにした。
チェックインして
二人はスィートルームに
GO!GO!
「。。まぁまぁじゃ~ん、ここでいいや~」
眠くてどうでもよくなった朱音は
ベットにバタリと倒れた。
…憧れの女優、清瀬朱々が
今、この目の前でベットの上で寝ている。。
ホンモノか?
これは夢かっ?…
痛ぇっ‼…
大樹は、自分の頬をつねると痛かった。
…夢じゃないべ。。…
ベットに横たわる朱音を見つめた。。
…白いリクルートブラウス、
グレーのスカート
普通地味なハズが。。
朱音さんだと何てこんなに艷っぽいの。。
この衣類の下には。。
あぁ、天女の花園。。…
大樹の妄想だけベットに飛び込んだ。。
「あ―――――っ‼シャワー――っ‼」
朱音が叫んで飛び起きた‼
「うわっっ‼」
大樹は、ビックリして後ろにのめって
尻もちをついた。
「私っ‼シャワー浴びなきゃっ‼」
朱音は、バタバタとバスールームに
入っていった。
…シ、シ、シャワー‼ワー――…
大樹は途端に照れ臭くなって
一巻、二巻、くるくると
カーテンにくるまって
窓の外、闇夜の街を茫然と眺めていた。。
…俺が、このあとシャワーを浴びて?
浴びて、どうするの?ってか―――――‼…
「コアラ―、シャワー空いたから入って‼」
シャワーから出てきた朱音が声をかけると
大樹はカーテンにくるまりながら
ひょこり顔だけ出した。
「何してんの?カーテンにくるまって‼」
朱音は、大笑いした。
「コ?コアラ―?」
「アンタのこと、これからそう呼ぶことにした‼」
「何で?」
「コアラに似てるから‼」
…さすがにクズコアラとは呼べないもんね…
…コアラ、可愛い過ぎだべ?
所詮、俺はクズコアラだべな。。…
大樹は、更にくるりとまわり
カーテン3巻めに覆い隠れた。
「もぉ‼イジケちゃった?」
朱音は思いきりぐるりとカーテンを剥いでやった。
「なーに、スネてんのっ?」
「ひぇ―――――――――――――っ‼」
悪戯っぽいキュートな朱音の笑顔と
眼が合ってしまい
大樹は照れがMAX状態‼
すかさずバスルームに逃げ込んだ。
…何なの?一体
今までにない変なヤツ‼
やっぱ面白いっ‼…
朱音は無性に楽しい気分で
ベットに横たわった。
大樹は、シャワー全開、
豪雨のような水を浴びた。
…いいのか?これから。。
ンなことして。。
シャワーから出たら。。
ベットにいる朱音さんが
可愛らしく俺を招く。。
我慢出来るわけねぇだろ‼
奇跡だ‼俺は幸せモノだっ‼…
しかし何かが囁やいてきた。。
激しい水音なのに
誰が喋ってくるんだよ~?
今度は理性の神様だよ。。
よく聴きな‼
―大樹。。ホントにもうやっちゃうのか?。。
これでパズドラ一緒に
出来なくなるかも知れないぞぉ?
お前、いい歳してエッチは
キャバ嬢に任せきりではないかっ‼
お前はルックス悪い。。
恋愛苦手。。
金もない。。
クズコアラなのだ。。
とりえは何もない。。
ならばひたすら紳士でいるのだ。。
操を守るのだ‼
愛する女を守るのだ―――――――――っ‼―
大樹は我に返った。
「ハイッ‼俺は‼紳士を全う致しますっ‼」
大樹がシャワーから上がると
既に朱音はベットに潜り込んでいた。
最早、すっかり眠ってしまっている。。
…ヨカッタ。。
朱音さん、寝ちゃってる
起こしちゃイケネェし
これでいいんだ‼俺も寝るべ…
大樹はソファーに横たわった。
…いいんだ‼
こうして朱音さんと一緒の部屋に。。
同じ空間にいるだけで。。
奇跡のお楽しみは大事にとっておくんだべ…
翌朝、朱音が目覚めると
ベットに大樹はいない。
…夕べ、コアラーいたよね?
シャワー浴びていたよね?
もしや私を置いて帰ったってヤツ?…
朱音、ふと見ると別に自分の着衣、
身体にも何かあった形跡はない。
…アイツ。。何もしなかったんだ。。…
…まさか、またカーテンにくるまってんの?…
朱音は吹き出しを堪えて眼をやったけど
窓際、カーテンに大樹の姿はない。
ソファーを見ると何かがうずくまっていた。
大樹はクッションを抱き抱えて
丸まって眠っていた。
…ここで寝てたのっ?…
その姿は。。
…ホントに、こいつコアラみたい‼…
朱音は、クスッと笑った。
男は、皆。。私の身体を求めてくる。。
誰もが私を欲して当たり前と思ってた。。
コイツ、何なの?
一緒の部屋にいて何もしないなんて‼
もしかしてチェリーボーイ?
いくらなんでも、まさかね。。
でも何かコイツって可愛いヤツなんだね‼
この馬鹿さ加減が愛おしくなる。。
余計にオモシロくなっちゃうじゃん。。
私、もしかして。。
―こんなヤツでもいいんじゃない?―
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