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15話
とは言ったものの…
「やっぱり怖い…」
「何が?」
あ…
莉菜とお昼中なの忘れてた…
「今日なんか変だよ?溜め息ばっかついてるし、時々ボーっとしてるし。悩み事?」
「ん…実はさ……」
稲田さんを好きって気付いたこと。
次を最後にしたいって言われたこと。
稲田さんに好きな人がいること。
告白しようと思ってる事。
莉菜に全部話した。
「へ~。ちゃんと自分で気付けたんだ。良かったじゃん。」
「でも失恋確定だよ?」
「何で?」
「稲田さん好きな人いるって言ったじゃん。」
「だから何でそれで失恋確定?」
「だって稲田さんの好みって清楚系だもん。私と正反対だよ?」
「はぁ…やっぱ朱音鈍感だわ…稲田さんがお気の毒。」
「どういう意味よ。」
なんかめっちゃ呆れられてない?
「そこを気にするんなら、朱音が清楚系になればいいじゃん。」
「無理に決まってんじゃん。莉菜知ってるでしょ。私が昔から派手だの遊んでるだの言われてたの。似合わないよ、私に清楚系なんて。」
「そんなのやってみなきゃ分かんないじゃん。女はメイクや髪形でどうとでも変われんのよ?」
「そう、なのかなぁ…」
「いいの?このまま稲田さんと終わっちゃって。」
「それは…よくない。」
「だったらやってみよ。私も協力するし。」
…そうだよね。
どうせ砕けるなら、やるだけやってから砕けた方がいい。
稲田さんだって、変わりたいって言って頑張ってたんだもん。
「莉菜、ありがと。持つべきものはやっぱ親友だね!」
「その代わり、今度駅前のカフェの新作奢ってね~」
2人で笑い合ってたら、元気出てきた。
莉菜には本当、高校の時からお世話になりっぱなしだな。
「で。まずは何から手をつける?」
「う~ん…とりあえず美容室?」
「今日は美容室休みでしょ。明日即行で予約入れよ。」
そっか、今日月曜だった。
次の約束は金曜日の夜なんだよね。
それまでに間に合うかな。
「メイクは…雑誌でも見てみる?ネイルも一緒に乗ってるだろうし。」
「そうだね。帰りにどっかで買ってみる。」
「服は?買いに行くなら付き合うけど。」
「あ…服は、ある。」
クローゼットの奥にしまってあったあの服。
あれを、着てみたい。
「そうなんだ。じゃあ、その服に合わせてメイクとか考えよ。」
「うん。」
結局大学が終わった後、時間があるからって莉菜と一緒に家に帰ってきた。
買って来た雑誌を見ながら、メイクの練習してるけど…
見慣れない自分の顔に違和感しかない。
「う~ん…これでいいのかなぁ?」
「いいよ、可愛い!今までと全然違う。」
「そう、かな…」
なんか莉菜にそこまで言われると、ちょっと照れる。
「…なんかさ、久しぶりじゃない?こうやって色々すんの。」
「あ……うん、そうだね。」
先輩の時以来、かな。
あの時も、莉菜と2人でこうやってよく練習してた。
「私さ、朱音に好きな人出来て本当に嬉しいんだよ。あれから恋愛出来なくなってたのを知ってるから余計にね。」
「莉菜…」
「合コンも悪くなかったでしょ?」
「そうだね。」
あの合コンに行って無かったら、稲田さんには出会えてない。
「私に感謝しなさいよ~。誘ったの私なんだし。」
「はは~。感謝しております、莉菜様。」
「よろしい。」
「…あはは!」
本当、莉菜には感謝してる。
こんないい子なのに、男運が悪いのはなんでなんだろ。
「ま、私の予想では99%フラれないと思うけど。」
「ええ~、それは無いよ。どっちかというと99%フラれる方じゃない?」
「あんたって子は本当に…とにかく、自信もって告白しておいで。万が一ダメでも、骨は拾ってあげる。」
「ありがと。」
「大丈夫だよ。絶対。」
「…うん。」
莉菜にそう言ってもらえると、本当に大丈夫って気がしてくるから不思議。
「ところで、莉菜の方はどうなの?先週も合コンだったんでしょ?」
「それがさ~、聞いてくれる?相手がさ~……」
久しぶりの莉菜との恋バナ。
楽しい時間は、あっという間に過ぎて行った。
翌日美容室に電話すると、予約が取れたのはまさかの当日夕方。
待ち合わせは19時。
予約は16時。
ギリギリ間に合うかな…。
「当日ならついでにセットもしてもらったほうがいいね。」
「うん、そのつもり。でも間に合うかな…」
「どこで待ち合わせなの?」
「駅前。」
「あの美容室から駅前なら10分もかかんないよ。美容室も2時間半あれば出来るでしょ。」
そうであることを願いたい。
その後も、メイクの練習をしたり、ネイルを変えたり、どんなヘアスタイルにしてもらうか莉菜と考えたり。
色々していたら、あっという間に金曜日が来てしまった。
「いよいよ今日だね。」
「うん…」
「今から緊張してんの?」
「…だって告白したことないから、何て言ったらいいかも分かんなくて。」
昨日の夜ずっとそれを考えてて、まさかの夜更かし…
睡眠時間たっぷり取るつもりだったのに。
これを6回もした稲田さんを尊敬する。
「そんなのシンプルでいいのよ。好きですって。」
「…そっか。」
もっと色々言った方がいいのかと思ってた。
「それより、今日の予定ちゃんと分かってる?」
「うん。それはバッチリ。」
私は金曜の午後は講義を取っていない。
だから、午前の講義が終わったら家に帰って、お風呂に入って、メイクと着替え。
夕方美容室に行って、そのまま稲田さんと待ち合わせ。
よし、完璧。
「朱音、頑張ってね。」
「うん。」
結果がどうであれ、今やれることはやったと思う。
フラれても、きっと後悔はない。
稲田さんの恋もちゃんと応援してあげられるように、自分の気持ちにケリをつけてこなくちゃ。
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