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番外編:意外な特技と幸せな誕生日
「いらっしゃい。それと、誕生日おめでとう。…朱音。」
「ありがとう、宏君。」
今日は21回目の私の誕生日。
いつもは家族でお祝いしてるけど、今年は彼の家で2人きりのお祝い。
そして今日は…宏君の家に初めてのお泊り。
実は男の人の家に泊まるのも、2人で朝まで過ごすのも初めての事だったりするから、滅茶苦茶緊張してたりするんだよね…。
スッピン見せるのが、すっごく怖い…。
でもいつかは見せるものだし、宏君には素の私もちゃんと知って欲しいと思ってる。
誕生日に外泊なんてってお父さんは最後まで反対してたけど、お母さんという強力な味方がいたおかげでなんとかお許しを貰えた。
宏君にお泊りしたいって言った時の条件が、ちゃんと両親に許可を貰う事だったから本当にホッとした。
だって一緒に居たいし、帰りたくなくなるのが目に見えてる。
「今色々準備するから、座って待ってて。」
「手伝うよ。」
「主役に手伝わせるわけにはいかないよ。あ、そうだ。準備出来るまで目隠ししてくれないかな。」
「目隠し?」
「そう。見えてたら面白くないから。」
「うん、分かった。」
言われた通りに、渡されたアイマスクをする。
どんな感じなんだろ。
楽しみだな。
「もう取っていいよ。」
その声で、ドキドキしながらアイマスクを外すと…
「え…すごーい!なにこれ!全部宏君が作ったの?!」
「料理はあんまり自信が無いけど、頑張ってみた。」
買って来たものを誕生日っぽくセッティングしてくれるのかなって想像してたのに。
まさか手料理とは思わなかった。
自信ないなんて言うけど、どれも美味しそう。
「ありがとう。凄く嬉しい。」
「良かった。でも、これで終わりじゃないよ。」
「え?」
徐に立ち上がった彼が冷蔵庫から取り出したものは…
「ケーキ…?」
「そう。実は料理よりお菓子作りの方が好きなんだ。朱音の誕生日ケーキは、絶対作りたいって思って。」
これ、素人が作ったとは思えない出来なんだけど。
やばい…料理もお菓子作りも、私負けてる。
絶対お母さんに料理とお菓子作りをもっと教えてもらおう。
私も宏君の誕生日に作ってあげたい。
「今ろうそく点けるよ。」
2と1の形のろうそくに火を点けた後、電気が消える。
ろうそくの火を消すと、隣から拍手が聞こえてきた。
「誕生日おめでとう。」
「ありがとう、宏君。料理もケーキも、凄く嬉しい。本当にありがとう。」
「喜んでくれて良かった。」
ホッと息を吐いた宏君が動く気配がする。
でも、すぐに電気を点けてくれると思ったのに中々明るくならない。
どうしたんだろ。
「宏君?どうしたの?」
「あ、うん。えっと…あれ?やっぱ見えないと無理か…?」
小声で何かブツブツ言ってるけど…
「…やっと出来た。後はこれを…」
「さっきからどうしたの?」
「ちょっと待って…あ、少し見えるようになってきた。朱音、しばらく動かずにいてくれるかな?」
「いいけど…」
暗闇に慣れてきた目が彼を見つけると、両腕が私の方に伸びてくる。
宏君ってばこんな暗闇で抱き締めようとしてる…?
なんて、ちょっとドキドキしていたら、首元に感じる違和感。
「よし。出来た。今電気点けるよ。」
すぐに明るくなった室内で首元を確認すると、見慣れないネックレス。
「え…?これ…」
「…僕からの誕生日プレゼント。普段し慣れないから手間取ってごめん。やっぱり電気消した状態だと難しいね。ちゃんと付けられて良かった。」
「これって、誕生石、だよね…」
「うん。これぐらいシンプルだと、普段使い出来るかなって。どう…かな。」
ちょっと心配そうに聞いて来る彼の胸に、思わず飛び込んだ。
「そんなの…嬉しいに決まってるよ!ありがとう。一生大事にするっ。」
プレゼントがどうとかじゃなくて、彼の行動全てが嬉し過ぎて泣きそう。
「そう言ってもらえて、僕も嬉しい。」
「大好き…」
「うん。僕も、朱音のこと大好きだよ。」
見上げると、ちょっと照れたように笑いながらゆっくりと近づいて来てくれる。
唇に彼の温もりを感じながら、やっぱり泊まることにしておいて良かったと思った。
だってこんな幸せな日に彼と離れるなんて、絶対に出来ないから。
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