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4話
「……であるので、これを当てはめるとここに矛盾が生じーー」
…ん?
バイブが鳴ってる。
メッセージだ。
講義中に誰だろ。
『学校お疲れ様です。稲田です。
今日の約束なのですが、少し遅れてしまいそうなので時間を変更してもらっても構いませんか?』
あら。
仕事忙しいのかな。
『仕事が忙しいなら、また別の日にしますか?』
別に今日に拘る必要もないしね。
『どちらの方がいいですか?』
いや、私に聞かれてもな。
『今日は何時頃になりそうなんですか?』
あまり遅いようならまた別の日にしてもらお。
『そうですね…19時頃かと。』
『じゃあ、今日の19時で。』
『分かりました。』
ふぅ。
やっぱり社会人は大変なのね。
ていうか、改善した方がいい所一個発見したかも。
今日会った時に言ってあげなきゃ。
ん?
また来た。
『ところで、今講義中とかじゃなかったですよね?』
今更そこ気にするんだ。
『講義中ですよ~。』
『ええ?!すみません、講義中にこんなメッセ』
メッセ?
意外。
あの人でもこんな略語使ったりするのね。
あれ、連続でメッセージが来た。
『すみません。途中で送ってしまって…。講義中なのにメッセージ送ってすみませんでした。講義に集中してくださいね。あ、返信は不要です。』
プッ…ふふっ…
なるほど。
何か簡単に想像つくわ。
慌ててる姿。
本当に無理なら返信したりしないんだから、そこまで気にしなくていいのに。
「ーー以上で講義を終わります。」
あ、終わった。
『もう終わったので大丈夫ですよ。稲田さんこそ、お昼休みですか?』
『本当すみません。僕は昼休憩ですよ。』
『お仕事お疲れ様です。午後もお互い頑張りましょう!』
『はい。頑張りましょう。ではまた夜に。』
さて、莉菜とランチに…
「朱音ちゃ~ん、さっきからニコニコしちゃって何があったのかな~?」
声をかけようとしたら、隣に座ってる莉菜に頬っぺたを突っつかれた。
「ちょ…痛いよ莉菜。頬っぺたグリグリしないで。」
「だったら何があったか白状しなさい。」
「何も無いよ。」
「うそつけ~。何もないのにあんなニコニコ楽しそうにスマホ弄るわけないじゃん。言わないつもりなら…こうだ!」
「え、ちょっ…あはは!莉菜やめてっ…くすぐった…あはは!」
「ほらほら~、言わないと続けるぞ~」
「あはは!言う!言うからっ…!」
「よし。じゃ、お昼行こ。」
「はーっ…はーっ…」
疲れた…
莉菜め、後で覚えてなさいよ。
今度絶対仕返ししてやる。
「ええ!あの人とデート?!」
「そ。デートの練習をすることになって、その相手を私がすることにしたの。」
いつもの場所で莉菜とお弁当を食べながら、私は稲田さんの事について説明した。
でも、全部本当の事は言ってない。
今まで彼女が居ないことも、告白6連敗中だって事も、莉菜には言わなかった。
本人の許可なくそういう事言うのは気が引ける。
そういうのって隠したいだろうし。
デートが原因で振られたことがあるから、何が駄目なのか確認する。
莉菜にはそう説明した。
「ふーん。でも珍しいね?朱音がそういうのに協力してあげるなんて。」
「たまたま気分が乗っただけ。」
「なーんだ。実はちょっと惹かれてるとかそういうんじゃないんだ。」
「…当たり前でしょ。」
私に好きになられたって、向こうも困るでしょ。
それに私は、もう恋はしないって決めてるんだから。
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