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1話
「最初から俺に興味も無かったもんな。どうせ他に男が沢山いて遊んでるんだろ?見た目通りだな。」
--何で浮気した男に私が責められなくちゃいけないのか疑問なんだけど。
浮気を怒ったわけでもなんでもなくない?
”一応”付き合ってるんだから、他に女が出来たんなら別れようって言っただけじゃん。
しかも彼氏がいる間に他の男と遊んだこととかないし。
まあ、もうどうでもいいけど。
「さよなら。」
別れ際、少し離れた場所で見ているさっきまで”浮気相手”だった女の子と一瞬目が合った。
私とは正反対な、大人しそうな見た目の清楚系な女の子。
確かに、一見遊んでそうには見えないけど。
見た目と中身が必ずしも一致してるとは限らないっつーの。
あ~、もう!
何か今更ムカムカしてきた。
誰かに愚痴でも…
~~~♪
「もしもし。莉菜、丁度良かった。」
「…朱音、何か怒ってる?」
「ついさっきすっごくムカつくことがあった。」
「何々?どした?」
………
「はぁ~?!何それ!何でもっと言ってやらないのよ!」
「その時はなんか…どうでもよくて。でも後でムカついてきちゃってさ。」
「だから好きでもない男と適当に付き合うもんじゃないって言ってるじゃん。」
「そりゃ、そうなのかもだけど…」
「まだ気にしてんの?あの事。」
「…」
「ごめん…今のは失言だった。」
「いいよ。…本当の事だし。」
「…あ!そうだ!」
「な、何よ、どうした?急にそんな大声出して。」
「ねえ朱音、今晩ヒマ?ヒマだよね?」
「まあヒマだけど…」
何か嫌な予感がするな…
「合コン行こ!」
やっぱりか。
「嫌だよ。私合コン苦手って知ってるじゃん。」
「そんな事言わずに。人数足りないんだよ~。」
「他の子誘えばいいでしょ。」
「誘える子はもう誘ったもん。だから、ね?相手は社会人で、年収も良いって話だし!」
「そういうの興味ない。」
「じゃあ浮気野郎の憂さ晴らしだと思って!ね?行こうよ~!」
「もう、しょうがないな。分かったよ。でも本当に行くだけだからね。私はご飯食べて時間が来たら帰るからね。」
「朱音~ありがとうっ!」
合コンとか、本当苦手なんだけど。
まぁ莉菜のためだし、仕方ないか。
美味しい物いーっぱい食べて、とっとと帰ろう。
**************
「林朱音です。」
自己紹介とか本当苦手。
何でみんなああスラスラと言えるのか謎だわ。
「4人は皆知り合いなの?」
「はい。同じ大学の友人なんです。」
「へ~。それにしては、なんというか…毛色が違うんだね。」
この人、今チラッと私を見て言った。
どうせ私が派手だって言いたいんでしょ。
いいじゃん別に。
あなたに迷惑かけてないんだし。
どいつもこいつも本当ムカつく。
私だって本当は…
やめた。
ご飯食べよ。
「え~、本当ですか~?」
「本当本当。でね…」
私以外は盛り上がってるな~。
まあ、変に気を使ってこっちに話題振られないのは有難いけど。
「あ…」
飲み物無くなっちゃった。
メニュー表は…
「はい。これどうぞ。」
「え…」
目の前に現れたメニュー表の先を視線で辿ると、眼鏡をかけた穏やかそうな男の人。
こんな人いたっけ…
興味無さすぎて自己紹介とかまともに聞いてなかったからな。
「ありがとうございます…」
でも、何でメニュー表探してるって分かったんだろう?
まあいっか。
とりあえず注文しよっと。
あれから、何となくさっきの人が気になってチラチラ見てたわけだけど。
この人あれだ。
”いい人なんだけど…”って言われるタイプ。
話を振られたらそれなりに答えてるけど、自分から話にグイグイ入ろうとはしていかない。
合コンなのに自分をアピールするわけでもなく、ニコニコと話を聞いて相槌打ってるだけ。
だけど、皆の飲み物や食べ物が減ってきたらすかさず注文を聞いてるし、人と話すのがすごく苦手なわけでは無さそう。
これじゃあ、優しそうだしいい人そうだけどって、多分それだけの印象しか残らない。
”いい人なんだけど、男としてはちょっと…”って言われるタイプだわ。
あ、そもそも出会いを求めて合コンに来てない可能性もあるか。私みたいに。
だったらアピールする必要もないのか。
うーん、でもなぁ。
この人の場合、そういうのとも違ってそうなんだよね。
「ありがとうございましたー。」
やっと終わった。
これで帰れ…
「じゃあ二次会はカラオケ行こうか!」
「わーい!行きましょう!」
「朱音も行くよね?」
「ごめん、私パス。元々これで帰る約束だったし。」
「え~!そんな事言わずに行こうよ~!」
莉菜、テンション上がってて約束のこと忘れてるな。
「あ、僕もここで帰ります。明日も仕事なので。」
「あ~そっか。明日休日出勤だっけ。お疲れ!」
「お疲れ様です。じゃあ、これで失礼します。」
よし、この人に便乗しよう。
「じゃあ私もあの人と一緒に帰るから。じゃあね。」
「え~!朱音~。」
莉菜がまだ何か言ってるけど、こればっかりは勘弁して。
今度幾らでも文句は聞くから。
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