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「お次のお待ちのお客さま、ご注文お伺いします。」
「ーーーーーー、はい、ではお会計¥2378円となります。
ポイントカードお預りしますね。」
「え、え〜と、で、では、お……、お釣りは2000と、えっと632円となります。」
「ちょ、ちょと〜〜。ど、どういうこと?何で2000円なのよ!?
私は一万円出したのよ?
ちゃんと確認してよ!?」
「あ、はい。も、申し訳ありません。い、今、レジ金の方をチェック致しますので。」
「ホント、早くしてよ! 私、他の店でも注文してるんだから!その店の料理が出来て、ベルが鳴ったらどうすんのよ!!」
激昂するお客にぺこぺこと謝り続ける高木 萌に気づいた黒田マネージャーがすっ飛んできた。
「お客さま〜〜〜、大変、大変失礼致しました!申し訳ございません。
お客さまのおっしゃる通りでございます。
こちらのスタッフがお客さまの一万円札を五千円札に見間違えてしまいました。 お客さまをお待てせする訳にはいきません。
直ぐに正しいお釣りをお渡しいたしますので!」
これほどかというほどのバカ丁寧な口調で謝る横で、萌が慌てて正しいお釣りを取り出してキャッシュトレイに載せた。
“鶏勝”ラーメンは大人気で今日も長蛇の列が出来ている。
後ろに並んでいるお客たちも、何事が起きたと思い思いに覗き込んでいる。
中にはしかめっ面で腕組みしている者さえいる。
「ご、ごめん! え、え〜と、じゃあ、美祐ちゃん!ちょっとレジ変わってくれる?」
黒田マネージャーはそう言い残すと、憔悴しきった萌をバックヤードに連れて行った。
「どうしたの? ホント、いつもの萌ちゃんらしくないわ。
いつものレジスピードじゃないし、さっきからミス連発して……。
体調悪いの?顔も血色悪いわよ?」
俯き加減の萌が少し間を置いてやっと口を開いた。
「す、すいません……。黒田さん。や、やっぱり無理です、私には……。
あ、あのパンダが……。ずっと私のこと睨んでるんです!!
し、信じてくれないかもしれないですけど、本当なんです!!
ぜ、絶対、あのパンダ、私のこと狙ってるんです!!」
本日二度目の高木 萌の絶叫に再び、周りのスタッフが振り向いた。
その中には大きな声でいつも目立っているあの中川 翔太も混じっていた。
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