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5. パンダ、喫煙!?
「くっ、何処だ!? 何処へ行った!? 」
黒い影を見失い、右往左往する警備員たち。
「くっそおお〜〜〜、何て素早いんだ? 足音もほとんど聞こえなかった……。」
そこへようやく、原田が合流する。
この中では一番の年長者だ。
かなり応えたのか、ぜいぜい激しく呼吸を繰り返している。
「は、原田さん、大丈夫ですか?」
「ん、ま、まあな……、何とか……。で、パ、パンダは何処行ったんだ?」
「い、いやあ〜〜、それが……、見失ってしまって……。で、でも……、暗がりで単なる黒い影としか見えなかったんで、本当にパンダかどうか…」
ここアウトレットは二階建ての構造で、店舗数では全国一の規模を誇る広大な敷地を有している。
原田たち警備員は二階のちょうどアウトレットの中央部にあるエスカレーター近くにいた。
「あ!あれ!な、何か、いますよ! エスカレーターの手すりのとこに何か座ってます!!」
「ホ、ホントだ、黒い大きな……。き、器用に、あんな狭いところに座ってやがる。お、おい!こっちを見たぞ!」
ゆっくりと相手を刺激しないように近づく警備員たち。
どんな突拍子もない動きをするか分かったもんではない。
もう汗ばむ季節はとうに過ぎ去っているにもかかわらず、原田たち警備員の額や背中には汗が滲んでいる。
徐々にその黒い影が輪郭を現す。
ようやく、五、六メートルと近づいた時だった。
「お、おい。何か煙が上がってないか?」
ゆらゆらとその黒い影の上の方から、煙が上がっているのが見える。
「や、やっぱり、パンダだ!大っきなパンダだぞ!!
こ、こいつ、しかも……。タ、タバコを吸ってやがる……。」
あまりの予想外の光景に呆然と立ち尽くす警備員たち。
パンダはその巨体を器用に狭い手すりの上に載せている。
こちらに向けているその狡猾な表情からはあの可愛らしいパンダのイメージとはあまりにもかけ離れている。
そしてーーーー。
ニヤッ
パンダが笑った。笑ったのだ。
原田たちを嘲るような笑いだ。
と、原田が声高に叫んだ。
「っていうか、あの手でどうやってタバコ掴んでるんだ?
掴みようがない。絶対に無理だろ!?」
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