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「で、でも原田さん、ちょっと暗くてどうやってタバコを握ってるか見えないっすよ。」
そう言いながら、その警備員は慎重にパンダに近づいて行く。
ゆっくりと、恐る恐るだ。
「お、おい!き、気をつけろ!何をするか分かったもんじゃない。
あの巨体だ、襲いかかられたらただじゃあ済まんぞ!」
原田は心なしか腰が引けている。
「お、おい、誰か、格闘技経験のある奴はいなかったか?」
警備員の一人がそっと手を挙げた。
「じ、自分、学生時代は空手を少々やってはおりましたが………。」
「じゃ、じゃあ、とりあえず、頼んだぞ。刺激しないよう近づくんだ。」
「ええ〜〜!!、い、いやですよ。格闘技といってもちょっとかじったくらいですし……。あんな奴に素手でかないっこないですよ!」
原田と同様、腰が引けている。
ゆっくりと近づいていた警備員も、間近で見る異様なパンダの風貌に怖気付き、立ち止まったままだ。
「ここは、やっぱり一番ベテランの原田さんが行くべきでしょ!」
「い、いや、年長の俺が何かあったらどうする?
やはり、一番若手の今年入ったばかりの………、え〜〜と誰だっけか。
そ、そう、君、君だよ!その若さに期待したい、是非だなあ〜〜。」
警備員たちが、見苦しい押し付け合いをしている。
その間も、パンダは悠然と手すりに座ったままタバコを吹かしている。
と、再び原田が声を張り上げた。
「そ、そうだ!喫煙はちゃんと決められた場所で吸うことになってる。
こんなところは当然、禁煙だ!!
従業員はちゃんと従業員用の喫煙所で吸わなきゃいかん!!」
何故か、原田は拳を掲げ胸を張って自信満々の様子だ。
「は、原田さん! 今、そこですか?!
だ、だいたい、あのパンダ、うちの従業員なわけないでしょ!!」
全員が突っ込んだ。
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