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7. パンダ論争!?
「ん?、あれぇ〜〜、まただわ〜〜。何でかしら……?」
「どうしたんだ? 何、朝からぶつぶつ独り言言ってんだ?」
しきりに首を振る黒田マネージャーを見て、心配そうに佐藤料理長が近づいて来た。
「あ!料理長、おはようございます。いやねぇ〜〜、何回帰る時に直しておいても、朝来ると向きが変わってるもんですから……。」
「………?ん?いったい、何の話だ?向きが変わってるって?」
「ああ〜、ごめんなさい。これです、この “マシュランマン” です。ちゃんと、真っ直ぐ前に向けて置いても、翌朝見ると微妙に右斜めを向いてるんです。何なんですかねぇ〜〜?」
「何だ、それ? それもお前の思い違いだろ? 人形が勝手に動くわけないだろ!? お前も平尾に感化されちまったか?」
「ええ〜〜〜、でも、ホントなんですって! 一度や二度じゃないんですから!」
「じゃあ、こっちのマシュランマンはどうなんだ?」
怪訝な表情を浮かべながら、佐藤料理長がもう一体のマシュランマンを指差した。
彼らが所属する店舗にはマシュランマンの人形が二体おり、“鶏勝”ラーメンと “満福” うどん屋のレジ横にそれぞれ飾られている。人形の大きさはせいぜい30cmほどだ。
そして、ちょうどあのパンダのロゴが真正面に見える位置にこの二店舗があるのだ。
「料理長、よくぞ聞いてくれました! こっちの “満福” のマシュランマンも微妙に動いてるんです! 二体ともですよ! 絶対、これは何かありますよ!
そう、思いません?」
「何かって、何だ?」
一瞬、間を置いた黒田マネージャーがゆっくりと正面の壁を指差した。
「料理長、アレですよ、アレ。あのパンダですよ。ちょうどマシュランマンが見てる方向に、あのパンダがいるんですよ!!」
珍しく、声を荒げた黒田マネージャーの方を周りの従業員が一斉に振り向いた。
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