20人が本棚に入れています
本棚に追加
/205ページ
「ねえ〜、気づいた?このお店にさあ、めっちゃイケメンがいるの。」
目を白黒させながら、萌が答えた。
「何よ、唐突に。そんな他のお店のスタッフなんかいちいち見てないわよ。」
「ああ〜、そっか。萌が担当してる “うまいねえ. JP” からだと位置的に見えないか……。残念ねえ。私がいる ”満福“からだとこのお店よく見えるのよねえ〜〜。」
※※※※※
二人がバイトしている店舗は全部で四つあり、ラーメンやデザート、チキン南蛮などの店がある。基本は担当の店があるが、その日のスタッフの人数や顔ぶれによっては違う店舗を任されることもある。
その辺りは佐藤料理長の匙加減一つだ。
そして、このフードコート内には別のテナントの店舗もいくつか軒を連ねているのだ。
※※※※※
「何、それ。そんな、イケメンに見惚れてばっかりだと、そのうち仕事でミスするわよ。いつも口煩い、宮本さんがいたらヤバイよ。今日は出勤じゃなかったから良かったけど……。」
「大丈夫よ。その点は上手くやるから。萌より私の方がここ、長いんだから。安心して。
それよりも、彼、今日もめっちゃカッコよかったなあぁぁ〜〜〜。
名前なんて言うんだろう?」
一人自分の世界に浸りきっている友人に呆れつつ、萌は大きく両手を上げて伸びをした。
ゴトンッ
と、思わずポケットの中の携帯を落としてしまった。
「ああ、いっけない。傷付いてないかなあぁ〜〜。」
体を反転させ携帯を拾い上げようとした時だった。
萌はちょうど壁の方を向いた。
「………、え!? な、何? 今の………。」
大きなロゴのパンダがーーーーー。
動いたのだ。
そう、前脚が横に動いたのだ。
そして、目も。
瞬きし、左右に眼球が二、三度高速で動いた。
「きゃあああああああ〜〜〜〜〜〜〜〜!!」
叫び声を上げながら、萌は椅子から物の見事に転げ落ちた。
最初のコメントを投稿しよう!