2. パンダが睨んでる!!

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2. パンダが睨んでる!!

ーーーー1週間後。 「お、お早う、萌ちゃん。ん?何だか、疲れてる? ちょっとやつれたような……。」 心配そうに顔を覗き込む黒田マネージャーに愛想笑いを作った萌は、そそくさと自分の担当の店舗に向かった。 その背中を心配そうに見つめる黒田マネージャーに向かって大きな声が飛んできた。 「お、お早うございます!! 黒田さん!! 今日も宜しくお願いします! 自分は今日はどこの担当でしょうか?」 この大声の主は最近バイトで入ったばかりの 中川翔太だ。 元気と明るさが取り柄だが、26才で今だに定職に付かずフリーターをしている。 「相変わらず、中川くんは朝からハイテンションねえ〜〜。 え〜とねえ〜。今日は “満福”よ。宜しく頼むわね。」 「え〜〜と、“満福”ってどのお店でしたっけ?」 「何言ってるの?うどんよ、うどん屋さんよ! 先週もやったじゃない! もう、いい加減お店の名前を覚えておいてよ!」 黒田マネージャーに一喝され、しゅんとなった中川をちらっと見た萌がそ〜と黒田マネージャーに近づいて来た。 「あ、あの〜〜、黒田さん、私、確か今日、“鶏勝”でしたよね?“」 「そうよ。今日は頼むわよ。“鶏勝“のラーメン食べたいってお客さんがわざわざ遠方からも来てくれたりするんだから。 うちで一番の稼ぎ頭なんだから、萌ちゃんのレジスピードで回転率上げていかないと。」 だが、高木 萌の表情はパッとしない。 「く、黒田さん……、別のお店に変えて貰うってことできませんか……?」 「………?な、何で……?急にどうしたの?何か訳でも?」 「ちょっと、言いにくいんですけど……。ちょうど “鶏勝”のレジから真正面に見えるんです。アレが……。」 「ん? アレ? アレって何?」 「………、パ、パンダです!あ、あのパンダです!」 「何訳分かんない事言ってるの? そりゃあ、見えるでしょ。位置的にそうなんだから。そんなのいつものことでしょ?」 「そ、それはそうなんですけど……。で、でも、あ、あのパンダがこっちを見てるんです! と、時々ニヤッと笑ったりして。わ、私のことずっと睨んでくるんです!!!」 最後には中川顔負けの萌の絶叫に周りのスタッフ全員が一斉に振り向いた。
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