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「なっ! お、お尻を? と、ということは……、そのパンダはオスってことか!」
「ちょ、ちょっと、そんなのどっちでもいいでしょ!あ、あなた、警備員なんだから、み、見てきて下さいよ!
それが仕事でしょ!」
少しキレ気味の従業員に気圧されながらも、原田は急いで無線で本部に連絡を取った。
「と、とりあえず、君たちはもう帰りなさい。他の警備員を何人か呼んだんで。私はこのまま現場に向かうよ!」
「お願いします! ああ〜〜、もう、キモい!まだ、あのパンダに触られた感触が残ってるうう〜〜。」
原田は急いで従業員が指差した方へ向かった。
40過ぎのメタボ体型のお腹が激しく揺れる。
ここに勤めて、これほど全速力で走ったのは初めてと言っていいだろう。
原田が先ほどの女性従業員が曲がった角に近づいた時だ。
「きゃ、きゃあああああ〜〜〜〜〜〜!!!」
再び、至近距離から悲鳴が飛び込んで来た。
慌てて原田が角を曲がると。
角を曲がって正面にある従業員用トイレから誰かが飛び出して来た。
荷物も周りに散乱し、地面に倒れ込んだ。
「だ、大丈夫ですか!?何があったんです!?」
「あっ、ああぁぁ〜〜。ト、トイレで……。手、手を洗ってたら、
鏡に大っきな影が写って……。見上げた途端、後ろから抱きつかれたんです!!」
「ええ〜〜!!だ、抱きつかれた!!で、誰に?」
「そ、それが、し、信じられないんですけど……。パ、パンダだったんです!! 大っきなパンダなんです!!」
今度は原田は手を離さなかった。
このセリフは二回目だからだ。
「ま、また、パンダか!! で、ソイツは何処に!?」
「わ、分かりません。私が悲鳴をあげて座り込むと、手を離してどっかに消えたんです。本当に一瞬で……。
で、でも服にいっぱい白と黒の毛がくっ付いちゃってて……。
なので、絶対、パンダに間違いないです!!」
「分かった、 信じるよ!君はもう帰って! 今からトイレをチェックするよ。にしても、今度も女性か。しかも後ろから抱きつくとは……。
なかなか大胆なヤツだ。となると、やっぱりオスか……。」
原田がなかなか動こうとせず、ブツクサ独り言を言っていると。
「は、早く見に行って下さい!! 逃げられちゃうじゃないですか!!!」
この従業員もキレた。
再度、叫び声が夜のアウトレット内に響き渡った。
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