僕と彼女の逢瀬

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「リュウ?」 そうシュウが呼ぶと桜の木の向こうから腕が出てきてクイクイと手招きされる。シュウははぁーとため息を吐きながら木の裏へと向かって足を進める。 桜の木にもたれかかるようにして、桜を見上げてるリュウはシュウに目を向けずに話はじめた。 「ありがとう。シュウのお陰でアカリにお別れできたよ」 「そうか。なら良かった。」 「きっと、このために僕はここに居たんだな。シュウとアカリにさよならを言うために」 もう、消えるみたいな言い方するなよなというシュウもそう言ったリュウ自身もお互いになんとなく目線を合わせづらくて互いに違う方向を見ていた。 「多分、僕はこれでここから居なくなると思うんだ。だから最後に約束してほしい」 リュウは見上げてた顔を元に戻してシュウの顔の近くに拳をぶつけたフリをする。 「アカリを、頼む。僕にはもうアカリの涙を拭ってやることも、抱きしめてやることも出来ない。だがお前にはできるだろ?」 「俺にアカリを幸せにしてやることなんてできねぇよ。リュウが一番よく分かってるだろ?」 あの時の気持ちが甦って、怒りに任せて言葉を放ったシュウにリュウは聞き分けのない子どもに言い聞かせるように微笑んだ。 「お前が幸せにできないって言うなら、どうかアカリが幸せになるまでそばに見守ってほしい僕の代わりに。」 「そんなこと、当たり前だろ?俺にとってお前もあいつも大切な人なんだからな」 お返しにと言わんばかりにリュウの顔の前に拳を打つシュウに満足したように笑顔を見せたリュウは風に乗って舞う桜の花びらを掴むように手を伸ばして握りしめた。その拳からそのまま花びらが地面に落ちた。
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