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暇つぶしに見ていたオークションサイトの出品物の中に、一際目を引く物が売られていた。
出品物の内容はやる気が出る箱である。
絶対、中身空っぽだよなこれ。俺は明確に詐欺商品らしい出品物の入札ボタンを押していた。即決百円である。ネタとして購入するにはちょうどよかった。
一週間後、宅配便で例の箱が届いていた。
箱自体は腕時計とかが入っていそうな、しっかりとした作りをしている。ゆっくりと箱を開けると案の定、箱の中身は空っぽだった。
予想通りすぎる展開に少々がっかりする。ノリで買ったはいいものの、やはり損をすると人の心は落ち込むらしい。
そもそもこの出品者が何をしたいのかよくわからなかった。面白半分でやるにしてもあまりに馬鹿すぎる。俺は購入手数料とこの箱で三百円の損。出品者は箱の料金を入れても、送料と出品するための会員費で四百円の損をしていることになる。
つまり出品者と落札者の間で無意味に金を浪費しただけだ。
三百円の使い道をしっかり考えればもっと有意義な物が買えたのではと思い後悔する。
本当にしょうもない物を買ってしまった。しかし、買ってしまった以上は使い道を考える必要がある。小物入れとしては利用できるかもしれない。
とりあえず写真でも撮って、ネットにでもあげるかと思いスマホのカメラを向けると部屋の隅にあるエレキギターに目がいく。
二年前から弾かなくなってゴミ箱に捨てるはずだったギターはまだそこに置いてあった。
スマホをその場に置いてギターに近づく。弦は錆びていてネックは曲がっていた。
箱が届いた日から一週間後、僕の部屋には生まれ変わったギターの音が鳴り響いていた。箱の中にはギターのピックが収納されている。
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