第三章 芸術祭といえば秋、なら実りと収穫でしょ!

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閑話ステラの恋愛話4  サラスさまが来られてから姫さまだけでなく、わたくしたちも多くの仕事を振られた。  姫さまが授業を受けている間はセルランと二人で敵派閥の名前や情報を交換、そのほかにも最近の魔物の情報も集め直した。  図書館で必要な本を借りて、寮の会議室で二人で調べあった。 「ステラ、そっちの資料をもらえるか?」  わたくしの方に近い資料を指差してきたのですぐに渡した。 「はい、でもあまりいい情報は載っていませんよ?」  わたくしが先に調べた魔物についての記述がされている古い本だ。  しかし内容もかなり古く、今と比較しようと思ったがあまりにも古過ぎて絶滅した生物も多かったため、途中で断念したのだ。 「確かにな。だがこの本は古いせいかデビルについての記述が詳しく載っていた気がするんだ。えーと、ほらこれだ」  セルランがページをめくってデビルについて書かれた部分を見せてきた。  よくそんな些細な情報を知っていると感心した。  最強の騎士で才能に恵まれていると言われているが、その才能に恥じないこの同僚を尊敬している。  わたくしはそのページを見てみた。 「へえ、デビルって昔から存在しながら進化も退化もしない生物なんですね。でもこれがどうしたのですか?」 「こいつらは進化も退化もしない理由を知っているか?」 「変化がない生き物ってことですよね……、環境に左右されないから……、いやでも生物だからありえない」  頑張って色々な条件を考えたがどうにも出てこない。  セルランはじっくりわたくしの答えを待っていた。 「デビルは何者かに生み出されたから? そうするとデビルキングがデビルを生み出している?」  わたくしはおどおどとセルランを見た。  だがセルランはその答えを正解とは見なしていない。 「残念だが、デビルキングとデビルは同種だがそういった関係性はない。これまで一度もデビルキングがデビルを生み出したという話はない」  わたくしは再度頭をひねったがこれ以上は思い浮かばない。  どの本にもデビルについて詳しく書いた本はない。  言ってしまえばデビルとはその程度なのだ。  この前はデビルキングを召喚したが、デビルがあのようなことをするのは普通はない  何度かデビル狩りをしたがわたくしも初めて見たくらいでそういったこともできるなど本にすら書かれていないのだ。 「あれ?」  そこでわたくしは本の記述でデビルがデビルキングを召喚するという内容が書かれていることに気が付いた。 「気が付いたか。そうだ、この本はしっかりデビルがデビルキングを召喚することを書いている。そしてさらに考察が色々あるんだ」 「この著者は変わっておりますね。確かに手強い魔物ですが、一部地域しか出ない魔物をここまで調べるなんて」  デビルキングを召喚するところを何日もの観察で知ったのだろう。  だがデビルはもともと高地でしか見ない寒い地域が好きな魔物だ。  飛行していたとはいえ、あの場所で現れるはずがないのだ。 「問題はこいつらの解剖結果だ。こいつらは脳や生殖器なんてものはない。いわば頭もなければ子孫も繁栄できない。いずれは全てのデビルは消え去るだろう。だがこいつらはどこで生まれてどこで考えているのだ?」 「どこって……。確かに不思議ですね。まるで誰かが人工的に作ったような」 「そう、そこだ。馬鹿げた話だがわたしは一つだけ心当たりがある。騎獣だ」 「騎獣ですか? ……つまりこう言いたいのですか、誰かが魔力で作ってずっとそれが何百年も生存していると。流石にそれは無理がありませんか?」  わたくしは同僚の馬鹿げた話に同意できなかった。  しかしセルランはまっすぐこちらをみた。 「そうとは言い切れんぞ。デビルと似た性質の魔物は他にも少しだがいる。そして生物の意味はいわば子孫を残すためにあると言ってもいい。子孫を残さないでいい生物は外敵がいないか不死であるかくらいだ。だがデビルやほかの魔物はその性質から外れている。これは明らかにおかしな事だ」  同僚があまりにも饒舌に話してくれたから考察するにいい対象なのかもしれないが、今はそのような学者のようなことをしている暇はない。  しかしセルランは真面目な顔でやっと本筋に向かった。 「そしてここからが本題だ。どうしてデビルはあの場に来たのか? それはマリアさまの髪の伝承と関係があるからではないかと?」 「蒼の髪ですか?」 「ああ、蒼の髪の伝承では迫りくるデビルを倒す描写がある。なぜデビルなんだ? 物語なのだからもっと知名度の高い魔物でもよかったはず。答えは一つだ。伝承の時代にデビルが生み出されたのだ。そして今でもマリアさまの髪に敵意を持っている」 「ちょっと待ってください。少しおかしいですよ! 確かに姫さまは不思議な事柄を起こしましたが、所詮はおとぎ話です。いくらなんでも……」  流石にセルランの話を全て馬鹿正直に聞いてはいられない。 「姉上が幼少の頃に……まだ今ほど好き勝手しない優しい姉上だった頃に言っていたのだ。この世に普通はありえない生物が予測しきれない行動をしたのなら、それは予想しないといけないことに違いない、と」 「ヨハネさまが?」  セルランの姉であり、フォアデルへに嫁いだ、天才的頭脳を持ったお方だ。  だがあまりにも危険すぎる思想にとうとうシルヴィが自領から追い出したのだ。 「姉上は物事の核心を突くことが息をするようにできる。だからわたしは色々な情報を集めて有り得ないと思うことが起きたとしても対処できるよう努めている。だがわたしもこの話は荒唐無稽な話だと思う。だからもし何か発見があれば教えてほしい」 「ええ、分かりました。ヨハネさまの言葉はわたくしも心に刻んでおきましょう」  わたくしでは絶対思いつかない観点から魔物を調べていることを知り、わたくしも今以上に精進しなくてはと思いなおした。 「ステラ、今いいですか?」  再度資料を調べなおそうとしたところで声がかかった。  見ると今授業がない下僕が一冊の本と一枚の紙を持ってきていた。
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