第三章 芸術祭といえば秋、なら実りと収穫でしょ!

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 ガイアノスが去ってから、サラスがわたしを気遣ってくれた。 「よく跳ね除けました。しかしガイアノスさまは少しばかり立場と場を弁えてほしいところです」 「本当です。さあ行きましょう。無駄な時間を過ごしました」  わたしはバラ園に着いて待っていると、今日のお茶会の相手であるシスターズにも入っているカナリアと少しおっとりとしているセレーネがやってきた。  挨拶を簡単に済ませて三人で雑談をする。 「なんだかこの三人でお茶会も久々ですね」  わたしがそう言うとセレーネは頬に手をやってため息を吐いた。 「わたくしだけずっとお茶会に参加できなくて寂しい思いでした。まさかカナリアさまはシスターズに入って何度かお茶会をしていたなんて。わたくしも入れば良かったと思いました」  ……もうシスターズの話はやめて!  これ以上、友達から妹へ関係性が変わるのは困る。  セレーネはそういった関係を望んでいるわけではないが、お茶会が減ったことは気にしているようだ。 「そうは言ってもまだ一回しかお茶会はないですわよ。セレーネさまも入ったらよろしいのよ! そうですわよね、マリアお姉さま」 「カナリアさん、今日だけは普通に呼んでくださいな」  友人の会でお姉さまは流石に距離を感じてしまう。  セレーネはふふっと笑って首のネックレスに自然と手が伸びていた。 「あら、セレーネさまはそんな大きなネックレス付けていましたか? もしや、殿方からのプレゼントですか!」  カナリアは楽しそうに言うと、セレーネははにかんだ。  頬を赤く染めて、無言であるが肯定しているようだ。 「まあ素敵。そうするともうすぐ卒業するアレンさんからですか?」 「はい。ご自身で魔力を練って作ってくれたみたいです」  好きな人から魔力を込めた贈り物があるなんて羨ましい。  大概はどちらかが卒業前とかに贈られることが多いので、女の子としては憧れるものだ。 「わたくしもヘンリーさまから早く頂きたいですが、卒業までまだまだ先ですのでそういったものはまだ後ですね。マリアさまはウィリアノスさまから常日頃頂いているのですよね?」  カナリアはわたしに話を振った。  一応ドレスとかは貰っている。 「ええ、贈り物は頂いておりますよ」 「やはり、マリアさまとウィリアノスさまが一番お似合いです。美男美女は遠くから見ているだけでこちらが幸せになります」  セレーネの言葉に気持ちよくしていく。  そこでカナリアは思い出したのだった 「ウィリアノスさまといえば、騎士祭の発表が驚きでしたわね。まさかガイアノスさまが次期国王だなんて。マリアさまはご存知だったのですか?」 「いいえ、わたくしどころかウィリアノスさまですら知りませんでした」  騎士祭ではずっと恐い顔をしていた。  国王も家族には伝えておけばよかったのに。  セレーネは頬に手をやって上をみた。 「王子であるのにご存知ないなんて、一体どういうことなんでしょう」 「あまり気にしてもしょうがないことなのでしょうね」  カナリアの言う通りであるが、周りはそうとってはいないだろう。  情勢が変化する世の中なので誰も彼もが情報を欲しがっている。  今のゼヌニムとの接近をみんなはどう思っているのか。 「もし知っていれば教えてほしいのですが、ゼヌニムと今度お茶会を開く話を聞いてどう思いました? それか他の者の意見でも」  二人とも顔を見合わせた。  おそらくこういった質問がくることは予想していたのだろう。  まずはセレーネから答えが返ってきた。 「正直に言いますと、ゼヌニムとの確執が無くなることは個人的には嬉しいです。ですが、周りではそう受け取っておられないようです。何度も喧嘩が起こり、授業でも席を隣に置こうともしません。親たちからも良くない話をたくさん聞いてきたと思います」  次にカナリアが口を開く。 「わたくしも同じです。特に今回はユリナナさまの恋の話も広がっています。たかだか一人の女性のために、揺れ動く情勢をこれ以上揺らさないでほしいと思っている者はいます。ですが、いずれは起こることだったと思います。誰もが後回しにしてきたことをマリアさまの代でやっと前に進むのなら大変喜ばしいことです。マリアさま、わたくしたちシスターズは貴女さまの役に立つために裏で色々動いてきました。よろしければ、これから来る二人の男女の話を聞いてくれませんか?」  わたしは一体誰が来るのかと首を傾げると、セルランから入園の許可を聞く声が聞こえてきた。  許可を出すと二人の男女、ジョセフィーヌの生徒とゼヌニムの生徒がやってきた。
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