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閑話ステラの恋愛話20
どこを見ても亜魔導アーマーを身に付けた学生ばかりで、ダラけた様子もなく熱心に訓練をしている。
「おい、そこ! 今のは連携がなってないぞ! 先輩がしっかり教えろ!」
「はい!」
「下級貴族も分からないからと言って聞くのを躊躇うな! 優勝するんだろ! 上級貴族も上としての矜持があるのならそれに見合った振る舞いをしろ」
領主候補生のメルオープが率先して学生たちをまとめていた。
パラストカーティだからと誰もが侮ることなく、従順に訓練へ参加していた。
「……ん?」
メルオープはわたくしに 気付いてすぐさま駆け寄ってきた。
「これはステラさま、ようこそお越しくださいました。変わらぬお姿に安心する思いです」
「メルオープさまも前と……いいえ、さらに研鑽を積まれたようですね。学生たちを見事に指揮していらっしゃいます」
「わたしではなく、マリアさまのお力です。あの方が頑張ってくださったからこそ、一つの目標に向けて全員一丸になれているのです。ところでマリアさまの体調はいかかでしょうか?」
メルオープが大変気にかけているのが見てわかる。
わたくしの言葉を待っていた。
「熱は下がりましたがまだ万全ではありません」
「そうですか。かなりの期間を公務で離れていたと聞きます。長期間張り詰めた環境にいれば誰しも不調の一つは現れるものですから、この王国院で少しでも休養を取っていただけたらなと思います」
姫さまの場合、王国院の外に出た方が大変な仕事が増える。
そのため少しでも姫さまの憂いを無くさなければならない……のだが。
「ところでステラさまは一体どのよう要件で来られたのでしょうか?」
わたくしは言葉に詰まった。
少しでも腑抜けている騎士を叱咤でもしようかと考えたが、誰もが真剣に自分の課題と向き合っている現場ではお節介でしかない。
「姫さまが騎士祭を大変楽しみにされていましたので少しでもお手伝いできればと思いましたが、どうも要らぬ世話のようですね」
この場からすぐに離れようとしたが、後ろから声をかけられた。
「そんなことないーー、そんなことありませんよ。ぜひステラにわたしたちの成長を見てもらえればと思います」
不敵な顔でこちらを見ているのはヴェルダンディだった。
どう見ても成長を見てもらうためではなく、わたくしを倒そうと考えている顔だ。
確かに彼の成長は著しいが、ここで傲慢になってもらいたくない。
「そうですね。しばらく稽古も出来ませんでしたし、いい機会かもしれません」
トライードを取り出した。
そこですかさずルキノも手を挙げる。
「わたくしもお手合わせお願いできますでしょうか!」
まさかルキノも挑戦するとは思ってもみなかったが、二人の成長を同時に見られるのなら好都合だ。
「いいでしょう。まずはヴェルダンディからお相手します」
訓練場の中央に移動した。
お互いに騎獣に乗って戦う。
他の学生たちはわたくしの戦いを見るために少し離れたところで見ていた。
「マリアさまの護衛騎士の戦いなんて滅多に見られないな」
「それもステラさまは女性騎士の中では最強と言われている。対するヴェルダンディさまもその腕前は学生の域を越えている。一体どちらが上なんだ?」
観客たちはわたくしとヴェルダンディの試合の結果を予想しあっている。
確かに才能はあるが、わたくしも騎士として誇りと経験もある。
いずれは越されるだろうが、六つも年下に負けるのは沽券に関わる。
「どこからでも掛かってきなさい!」
「言われるまでもない!」
お互いの殺傷性のないトライードで一撃を当てれば勝ちだ。
審判をする学生がコールをした。
同時に動いた。
騎獣が加速して衝突しようとする。
お互いのトライードをぶつけ合い交差した。
「もっといくぜ!」
ヴェルダンディはさらに魔力を上げて、一度空に上がってから急降下した。
加速度が乗った一撃は流石のわたくしでも止められるとは限らない。
その攻撃が来る前に自身の騎獣をもっと早く加速させて攻撃を避けた。
だが逃げるだけでは能が無い。
すぐに反転させてわたくしから攻撃を始めた。
「受け止めてみなさい!」
体の一部のように騎獣を操り、連続でトライードをぶつけた。
だがすべての攻撃を受け流された。
「なっ!?」
「前の俺とは違う!」
ヴェルダンディのトライードが思いっきり横一閃で振り抜かれた。
完全に隙を衝かれたわたくしはその攻撃を待つしか無い。
そこで危険が迫った時に時が遅くなった。
迫り来る脅威から全ての感覚が研ぎ澄まされた結果、自身の体がこれまでの経験から最適解を導き出した。
自身の騎獣をその場で一回転させた。
「うそだ……ろ!?」
必殺の一撃を狙った攻撃が外れたことで逆に大きく隙を作ってくれた。
わたくしはすぐさま体勢を戻して素早くヴェルダンディの体へ叩きつけた。
「そこまで! 勝者はステラ・エーデルガルト!」
どうにかわたくしの勝利で終わった。
だがとうとう彼はわたくしに追い付いたのだ。
まだ年下の可愛い後輩と思っていたのに、もうすでに実力で並ばれた。
一年が経つ頃にはもう勝てなくなるのは目に見えている。
「流石です。次はわたくしもお願いします!」
次にルキノが出てきた。
……彼女もまた成長しているのだろうか?
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