第一章 魔法祭で負けてたまるものですか

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 メルオープたちが道を作ってくれているのでこちらも動く時がやってきた。  白い布に被せていた物の姿を表す時がきたのだ。 「お、おいマリアさまを見てみろ!」 「どうし……なんだあれは!?」 「新しい鎧……なのか、それにしては大きすぎないか?」  観客もわたしの新しい鎧に注目していた。  この日のために何度も練習と微調整を繰り返してきたのだ。  魔力の練習を毎日魔力切れを回復させながら無理やり行ったのだ。  おかげで何度意識を失いかけたか。  それもこの日のためだ。 「先程は一歩も動かないと言いませんでしたか?」 「あら? この鎧が勝手に動くのだから嘘は言ってませんわよ」  ルキノはため息を吐いてわたしの言う通りにする。  わたしは青く染まったマリア用第二世代魔導アーマー、略してマリアーマーにルキノの協力をもらって上から乗り込んだ。  ドラゴンとデビルキングの素材を使って作っているため、かなりの強度になっている。 「なんだあの変わった鎧は? わたしの鎧は持ってきてないのか?」 「それでしたら、あれはお父さまから頂いた鎧を使っているのでかなり凄いって、お姉さまが言っていましたわ」 「わたしの鎧を使っただと? おい、セルランどういうことだ!」 「申し訳ございません。シルヴィの鎧はあの魔道具へと姿を変えました。わたしどもではマリアさまを止めることできず申し訳ございません」 「そうすると……あれがわたしの鎧……しくしく」  遠くで何か泣き声が聞こえた気がしたが今はそれどころではない。  わたしは魔導アーマーに魔力を送る椅子の肘掛のようなものを握った。 「おい、マリアさまだけじゃないぞ!」 「赤、黄、緑それと黒か? なんか変な色の鎧だな?」  下僕とパラストカーティのいじめに遭っていた三人の下級貴族ルージュ、ジョン、ヴェートが亜魔導アーマーの鎧を着ている。  黒は下僕、赤はルージュ、黄はジョン、緑はヴェートがそれぞれ着ている色だ。 「プププ、あははは……マリアさんが何かしら準備をしてきているのは知っていましたが、まさかそのようなダサい鎧を見せてこちらの戦意を削ぐつもりですわね。もう可笑しくてお腹が痛い」  アクィエルは大笑いでこちらをバカにしている。  だが笑っているのも今のうちである。  この亜魔導アーマーの力を見てしまったらそのような笑いなど消しとばしてあげます。 「おほほ、このかっこよさが分からないなんて貴方の感性もその程度ですわよ。これからこの四人の超人的な力でそこにいる側近たちを倒してみせますから!」 「やれるものならやってくださいまし。もうだめ、お腹が痛い。本当に芸術的センスが一向に育ちませんのね」  わたしが考案したデザインを元に作ったのでかなりカッコいい。  特に力強くみえるように作ったデビルキングの顔を肩に付けて、さらに可愛らしさを出すために鎧の表面につけた猫の顔。  力強くもあり可愛さもある鎧をわたしが初めて作ったのだ。 「くぅう、周りの視線がきついがマリアさまが考えてくださったもの。騎士道は主人の願いを聞くためにあるのだ」 「辛いんだね、大丈夫だよ。すぐに慣れるから」  下僕がルージュの肩に手を乗せてなにやら話している。  おそらく初めての実戦のため、勇気付けているのだろう。  他の二人も神妙に頷いているので、だいぶ打ち解けているようだ。  わたしもこの者たちに激励しなければならない。 「いい、あなたたち? これはこちらの研究所のアピールにもなりますので、派手に暴れなさい。あなたたちなら必ずやってくれると信じています。あとアクィエルさんに目に物をみせてあげたいので少しくらい顔を殴ってもわたくしが権力で守ってあげます」  力強く拳を握り力説する。  アクィエルのあの馬鹿にしたような笑いを歪めることが何でもやりたいと思っている。  だが、ルキノは手で顔を抑えてやれやれと呟く。 「マリアさま、お怒りはわかりますがお鎮めください。下僕、わたくしがマリアさまをお守りしますのでアクィエルさまを守っている騎士二人を抑えなさい」  ルキノの指示に下僕が了解した。  騎士であるルキノは本来なら前に出たいだろうがわたしを守らないといけないので任せるしかない。  これまで訓練を一生懸命にやってきたので、前に出させてあげたいがおそらく言っても断ると思うので、何か上手い手がないかを考えた。  しかしルージュの言葉でその考えは思考の外へと行ってしまった。 「マリアさま、一つだけお願いがあります」  ルージュは何か思うところがあるみたいでこちらに真剣な顔を向ける。  体を強張らせて、少し手が震えている。  わたしはその顔に何かしらの覚悟のようなものを感じたので話を聞くことした。 「どうかしましたか?」 「色々な配慮をいただいて図々しいとは思いますが、どうかあのルブノタネへの雪辱の機会をわたしめにくださいませんか」  ルージュの目がこちらに訴えかける。  数日前にいじめを受けている現場を見ているのでわたしもそれには賛成だ。  もう知らない仲でもないので、身内贔屓してしまうのは仕方ない。 「マリアさまの命令より私怨を優先させるということか!」  ルキノの怒声にパラストカーティの三人はビクッと体を震わせた。  上級騎士であるルキノの言葉は特に響くようだ。  騎士の端くれからしたらルキノは雲の上の存在のため仕方ないかもしれないが、事情を知るわたしは手でルキノを制した。 「ルキノいいのです。ただ早く倒しなさい。あくまでこれは試合なのですから」 「ありがとうございます!」  わたしが許可したことでルキノも承諾して一歩下がる。  側近としてはわたしが侮られないようにしないといけないので正しい判断だ。  だが今はそのような見栄を張っているほど時間もない。  ルキノも察してくれているのでこれ以上は異論を挟まない。  四人とも水竜にまたがり前線へと向かっていた。
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