強面ヒーロー(SIDE:Mamoru)

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「おーい! こら、何ぼんやりしてる?」  いきなり目の前にドアップが現れ、俺は思わず仰け反った。 「うわっ!!」 「二つの現場を掛け持ちして疲れた? いや、まさかなぁ……体力バカな護が疲れるとか、想像できねーし」 「祐也さん……」  ドアップの主は、アクションチームのリーダー・海崎祐也さんだった。身体つきもどちらかといえば華奢で、顔立ちも中性的な美人。なのに、ヒーローはもちろん、悪ボスもこなしてしまうすごい人。  見た目だけなら、俺の方が絶対合っているだろう。でも、悪ボスはショーの盛り上がりに関わる重要なポジションだ。俺にはまだまだってところだろう。といえど、俺はヒーローというポジションに憧れてここにいるのだから、まだここにこだわっていたい。 「何考えてた?」 「いえ、別に」 「うっそだぁ! 皆が腹減ってがっついてる最中に、ぼーっとしてるなんていつもの護じゃねぇ!」  確かに、現場が終わった後の飲み会では、乾杯が終わった後はひたすら食べまくっている。それはもう、メンバー全員が我先にと争うように。 「うーん、なんだろうなぁ? 今日は別に大失敗とかもなかっただろ? 護の動きは相変わらずキレキレだし、どっちの現場も大盛況。ぼーっとする要素が見当たらない」  祐也さんが腕を組んで首を傾げている。いや、そんなに考えなくてもいいんだけど。 「あ、なるほど!」  いきなり、祐也さんがポンと手を打った。わかった、というような得意げな顔をしている。そして、おもむろに俺との距離を詰めてきた。え、なんだよ、これ? 「護のぼんやりの原因、わかった」  こそっと小声で呟いてくる祐也さんに、俺は再び仰け反る。 「はぁ? なんですか、それ。だから、何でもないって……」 「こ・い・わ・ず・ら・いっ」  一語一語区切ってまで、何を言うかと思えば。 「はぁっ!?」  俺の大きな声に、皆がこっちを向く。一気に注目を集め、俺は慌てて祐也さんから距離を取った。
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