桜の季節は想定外から始まった

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 ***  私が生徒会へ入るには、ちょっとした経緯があった。  春、四月。  私は重い足取りで学校への通学路をトボトボと歩いていた。桜の木には、美しい花が咲いている。それを見ても、心はちっとも弾まない。 「はぁ……」  口から出るのは溜息ばかり。  原因はたった一つ、簡単だ。「学校へ行きたくない」これに尽きる。  クラスでいじめにあっているとか、そういうことじゃない。クラスには少しずつだけれど、馴染んではいる。  授業についていけないのか、といったことも違う。これでも私は、入学式で新入生総代として挨拶をしたほどだ。成績はまったく問題がない。授業だって楽勝だ。  それなのに、どうして学校へ行きたくないのか。それは……。 「いまだに意味がわかんない」  私は元々、今通っている高校・明智学園高等部へ進学するつもりは全くなかった。それなのに、どうして通う羽目になっているかというと、県内トップの進学校である桜森(さくらのもり)高校への受験に失敗したからだった。  いまだにどうして落ちたのかがわからない。受験当日、特に体調が悪かったというわけでもなく、出来も悪くはなかった……はずなのだ。  直前の模試でもA判定が出ていた。自分でも合格を確信していたし、もちろん周りもそうだった。それなのに。  落ちた時は、本当にいたたまれなかった。塾の先生も、友だちも、両親も、まるで腫物を扱うかのように私に接した。そんな風にされることもキツくて、いっそ消えてしまいたいと思ったものだ。でも、現実に消えることなんてできるわけがない。  そんなある日、転機がやってきた。
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