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あの日に戻れるなら、何度だって神に頭を下げるし、四六時中祈って身を捧げても良い。だけど、そんな事をしても彼女は戻って来ないと知っている。よくできた俺は、執拗に宗教に誘ってくるような奴を退ける為にも、いつも通り逞しく元気に過ごさなければならない。
大丈夫。俺は、ちゃんと生きるから。そうやって周りに心配をかけないように過ごす為には、いつまでも彼女のことを引き摺って悩んでいる場合ではない。だけど、都合よく忘れることなんて出来なくて。毎日、思い出しては苦しむ訳で。
それでも明日はやってくる。
太陽が昇って、沈むと月が昇って、沈むと太陽が昇って、を延々と繰り返すこの世界の理不尽さにようやく気付いた俺は、彼女と正反対の選択をすることにした。
生きよう。たとえ、彼女の記憶が、日々のどうでもいいことに埋もれていこうとも。
俺は生きなければならない。
そう決断したはずなのに、煮え切らない思いがあるから。
今、こうして彼女がいなくなってしまった時の状況を再現している。
どうか空の上で幸せでありますように、と願うことで贖罪している。
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