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1-1 謎なクラスメイトと死神
淵田小葵との奇妙な関係が始まったのは、死神に出会ってからだった。
その日、俺はいつも通り、買い物袋を提げて夜道を歩いていた。週に一回は、母さんが介護士として働いていて夜勤があるため、夕飯を自分で用意する必要があったからだ。
まぁ、父さんは単身赴任中ということで一緒には住んでいないし、適当に自分の分だけお弁当等を買って済ませてもいいのだけど、翌日の朝に母さんが帰ってきたときにも食べられるし、と考えて料理を作ることにしている。
という訳で、袋の中身はじゃがいも人参玉ねぎカレールー。これしか作れないのだ。
そういえば、と。不意に、なんの変哲もない見通しの良い道路を歩きながら、なんの意図があってあの一言を発したのだろう、と今日一番の可笑しな話であるクラスメイトの淵田小葵について思い出していた。
「私に似た犬でも飼っているの?」
どういう状況でそう問われたかと言うと、教室で、バスケ部の奴らがボールを投げ合っていて、それが淵田小葵の肩に当たったにも関わらずあまりに軽い詫び方だったので、ちゃんと謝れよ、と言い、大丈夫か? と俺が彼女に聞いた後だった。
まず、キョトンとしていた。何故そんなことを聞くのか、とでも言いたげな表情で垂れがちな大きな目を長い前髪の間から覗かせていた。無言でふたり見つめ合う、という謎の時間が発生してしまった。それから、うわー優男ーなどと言いながら一年のときから仲の良い廉が肩を組んで割って入って来たのでその時間は五秒で済んだ。
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