1-1 謎なクラスメイトと死神

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 というか、この状況で優男は意味が分からない。  バスケ部の奴らは、ボールがあらぬ方向へ飛んでいってしまった時こそ、やべ、という表情をしたものの、実際に当たったのが淵田小葵だと分かった瞬間、安心したような笑みを浮かべたのだ。  俺はそれを見逃さなかった。  別に正義感を振りかざすつもりはないけど、少なくともボールが当たって淵田小葵は読んでいた本を落としたのだから、それを拾うくらいしても良かったのではないかと思った。それもしないで、あぁ悪り、とボールを拾いに行く始末だったので、ついキツく言ってしまった。  人を見て判断して軽い態度をとる奴は嫌いだ。  それは、優男というのだろうか。  と、思ったけど、きっと廉は咄嗟にフォローしてくれたのだ。少しピリついた空気を、正論を言う俺があくまでも大袈裟で優しい風に仕立て、緩和した。  そういえば廉もバスケ部だった。しかも次期キャプテン候補のエース。そんな廉が、「てかお前ら、あんまり派手に教室でボール使うなよー。俺が見逃してるのバレたらヤマセンに怒られんじゃん」と明るく言うので、完全に相手の溜飲も下がったのだった。(因みにヤマセンというのは山名先生というバスケ部顧問のあだ名だ)。
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