おまけ話。

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          海やプールに遊びに行かなくても、夏という開放的にさせる季節には、お祭り、花火、バーベキューなど、他にも沢山ある。  それでも、暦が行きたいと思う場所ならば、リョクは喜んで同行する。  本当は、誰よりも信頼している大切な友達に、誰よりも愛している素敵な人を紹介したい。  それなのに、未だに打ち明けられないのは、暦がリョクにとって未来永劫を誓いたいと願う相手だからだ。  十代半ばの恋愛は、気楽で自由奔放だ。  そのうち大人になって、就職をして、人並みの収入を得るようになって、周囲が〔 結婚 〕というものを意識し始めた時、暦はリョクと恋仲である関係にどんな決断を下すのだろうか。  何度想像してみても、こればかりは、暦の顔も、声も、どれもこれも全てがぼやけてしまう。  今が幸せなら、それで良いだなんて綺麗事を並べ立てる気持ちには到底なれない。  今が幸せなら、未来はもっと、今以上の幸福を掴みたいと、皆から祝福をされたいと欲張りになってしまう。  環境が変われば、多少なりとも心境も変わるであろう事は避けられない。  リョクは生まれて初めて、大人になるのが怖いと思った。  暦の前でだけは、口でなら甘い言葉をいくらでも言えると、軽薄でお調子者な人格者にはなりたくない。  でも今は、口約束でしか暦への愛を表現出来ない事が非常にもどかしい。        
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