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暦はリョクのプライドを尊重して、これまで黙秘していた疑問を声に出して表します。
「本当はプールに来た時からずっと思っていたんだけど、坂谷君、もしかして……泳げないの……?」
図星を突かれてしまい、頑なに隠してきた欠点を誤魔化しきれない現状にリョクは力なく頷きました。
「泳げないなんてすっげーダセェし、森島には絶対にバレたくなくて……。でも森島がプールに誘ってくれたのがすっげー嬉しかったから絶対に断りたくなくて、プール当日までにどうにかして泳げるようになりたくて、こっそり泳ぐ練習したんだけど、やっぱり泳げなくて……」
「泳ぐ練習って、プールに通ったりしていたの?」
暦から訊ねられて、リョクは気まずさのあまり顔を背けてしまいます。
「……溺れんのが怖ぇから、ベッドの上で泳ぐ真似をしてイメージトレーニングをしてただけ……」
リョクは独自の練習方法が情けないと痛感してしまい、間抜けすぎて自分でも呆れてしまいました。
そして、暦の小さな笑い声が益々リョクに痛手を与えてしまったようで、リョクはより一層項垂れてしまいます。
「あ、ごめんね。笑ったりしたら失礼だよね。今のは嬉しくて笑ったんだ」
落ち込むリョクを慰めながら、暦は朗らかに続けます。
「ぼくにとって坂谷君はただ遠くから見ているだけの憧れの存在で、体育の授業の坂谷君を見ていると、走るのはすごく速いし、サッカーとかバスケも機敏な動きでシュートを率先して決めるし、スポーツはどれも得意で、これといって不得意なスポーツなんてないと思ってた」
自己嫌悪に陥り、完全にめげていたリョクの頭が少しだけ持ち上がります。
「だから、坂谷君の意外な一面を知る事ができて、ぼく今、とても嬉しい」
傷心から回復してほしいと、いつもの明朗快活なリョクに戻ってほしいと願う暦が一つの提案を持ちかけます。
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