第1章

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      本日のお昼休み、リョクと暦は図書室で過ごす事を選びました。  図書室には、リョクと暦の二人だけです。  暦が最後の具材を口に運び、胃袋に入れ終わったところで一呼吸置きました。  昨夜から語句の羅列を何度も脳内で念入りに演習してきたのです。  それを今になって、緊張感に負ける訳にはいきません。  暦は勇気を振り絞って行動に移します。 「坂谷君、来月の一番最初の土曜日って空いてる? もし空いてるなら、一緒に遊びに行かない?」  あまりに突然すぎて、リョクは言葉の意味を理解するのに数秒間かかってしまい、思わず暦を凝視しました。 「空いてる! 空いてる! 超空いてる! 超ヒマ! どこ行く!? どこ行く!?」  これが喜ばずにいられましょうか。  暑苦しいほどに密着してくるリョクに暦も歓喜して、緊張感も(ほぐ)れます。  暦は鞄の中から二枚のチケットを意気揚々と取り出しました。 「プールの無料券が有るんだけど、もし良かったら坂谷君と一緒に行けたらなって、行きたいなと思って」 「プール……」  ほんの数秒前までは、誰の目から見ても分かりやすいほどに陽気な気分だったリョクの態度の変化をすぐに察知した暦の表情が一変して曇ります。 「あ、プールは嫌かな……?」  これ以上、プールの話題を続かせるのは悪循環を招きそうで、リョクとの仲にも支障をきたしてしまうのではないのかと不安に思った暦は悲観的になり、憂鬱な感情に押し潰されそうになります。       
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