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「森島、待って!」
そんな暦の後ろ姿にリョクは咄嗟に呼びかけて、暦が図書室から出て行ってしまう前に引き止めました。
振り返った暦がリョクと顔を見合わせた時には、暦の唇はリョクの唇と重ねられていました。
特に口約束を交わした訳ではありません。
二人っきりになった時には、なるべくなら、いや、必ずキスをするという暗黙の掟がリョクと暦との間で成立していました。
最初はぎこちなかった口づけも、自然と柔らかく溶け合い、しなやかに一心同体となります。
限られた時間内での口づけは、濃厚には程遠く、深まりもしない、儚く、切なくなるだけです。
予鈴が鳴ってからでは遅すぎます。
「次の授業、サボらねぇ?」
と、リョクが言ってくれはしないかと、暦は心のどこかで期待して待っています。
暦は日に日に強まるリョクへの愛情に浮かれながらも、それに対処しきれずに、不謹慎になってゆく自分自身に怯えては軽蔑もしていました。
「もっと、坂谷君とキスしたい」
毎日願望している己の欲望を爆発させて、リョク本人に伝えたいが、伝えてしまったら最後、心の内に秘めた色欲がひたすら暴走し、理性などあっさりと惨敗してしまう事が暦には確信に近いほど大いに予想出来てしまえていたのです。
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