フリーの発破師 小酒井ケンイチ異世界へ

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フリーの発破師 小酒井ケンイチ異世界へ

 俺の名前は小酒井ケンイチ、フリーの発破師(はっぱし)をしている。  発破師とは爆弾を仕掛けて爆破させる作業員の事だが、通常は工事現場やビルの解体などで重宝される人々を指す。  俺の場合は合法的な発破作業では無く、主に保険金詐欺を行うために爆破作業を行っている。  手口としては保険の掛けてある建物等に火災を起こし、そして爆発物に引火したと見せかけて予め設置した爆弾を爆破させる。大切なことは、この一連の爆破作業に関して人殺しをしないように細心の注意をはらって行う事だ。なので火災が発生した時点で消防や警察に連絡して人間の避難を完了させその後爆破するようにしている。    …… …… ……   ここは何処だ? ベットの上? ふわふわのベット? 天蓋付きの大きなベット? 体がなんだか痛い、と言うか体が全体的に動かない。声? もしかして声も、声も出ないのか!   「んん~」    女の寝息?    何かが眼前を覆い俺の顔に乗しかかった。  何だ?  「ん~ ムニャ」  ネグリジェ? 柔らかいもの? オッパイ?  女か!  体が動かない、……首は動く、血? 血が出ているのか? 体中が痛くて死にそうだ。 「ん~ん マリア、まだ起きないわよ」  この女、呑気に寝やがって、白いネグリジェがどんどん真っ赤に染まっていくじゃないか。  稼働する部位で確認できるのは……、手はあるし足もある。しかし動かない。動かそうと意識を集中させただけで激痛が走る。俺の体はかつてないほどボロボロなようだ。  なぜこんな事に。  ……    レバノンの薬品倉庫の爆破作業を依頼されて実行中だったのは思い出せる。依頼自体は難しいものではなかった。依頼主が保険金詐欺を行う為に薬品倉庫の爆破を目論んでいてその仕事を俺が請け負ったのだ。火災を起こしそして薬品に引火する恐れがある事を事前にリークして周辺住民、作業員の避難完了と同時に爆破の手順だった。そして俺は爆破スイッチを押したところまでは覚えている。しかし1km先にいたのに有様だ。これは予想以上の爆発が起こったに違いない。  しかしこの女、胸がでかくて柔らかいので口や鼻を隙間なく塞いでくる。 こりゃやばいな~ 体が動かないしこのまま窒息死するかもしれない。 「セシリア様、朝ですよ起きてください」  何だか落ち着いた声の女がやってきた。    そしてその声の主が俺の上に覆いかぶさっている女をよけた。 「まあ、セシリア様ったら、また変な男をベットに連れ込んで、本当にしょうがない人ですね」  メイド服を着て真面目そうな眼鏡を掛けた女性が俺の上で前かがみになり覗き込んだ。こちらも胸がでかい。 「ん~ マリア~ もう少し優しく起こせないのかしら」  どうやら俺に覆いかぶさっていた女も起きたようだ。  よく見るとこのセシリアとか言うお姫様、めちゃカワイイじゃないか。 「姫様、これはどおいった趣向なのでしょうか?」 「趣向って何?」 「この血達磨男の事ですよ」  血まみれのセシリアが俺の方を見た。俺も目玉だけでセシリアを見てお互い目を合わせる。 「なっ! なになになに、この男は何?」 「ナニナニナニじゃありませんよ、そこまで大げさに知らない振りしなくても良いです、どうせ姫様が夜中に城から抜け出してこの男を連れ込んだのでしょ」 「知らないわよ。アッ! 私しも血まみれじゃない、どうしてくれるのよ!」 「そおですか、姫様はあくまで白を切るのですね、ですがこのボロボロの男がまさかいきなり別世界からやってきて姫様の下で寝ていたとか言うつもりじゃありませんよね」 「そうとしか考えられないでしょ!」 「あなた、昨日の夜に町で姫様にボコボコにされてここに連れられて来られたのでしょ、もしそう言う事なら王女様に相談してから慰謝料をお払いしますのでそれで丸く収めていただけないでしょうか」 「マリア! 私が連れてきた事を前提にしないで! こんなボロ雑巾、私し知らないわよ」 「……まあ確かにそうですね、姫様はいつも男をさらってくるくせに触る事さえできない腑抜け姫ですものね」 「マリアだっていつも男に触れられないじゃない」 「……解りました。この男はベットの底から生えてきた事にでもしておきましょう。ところで姫様、この男を今日のイベントにでも使われたらいかがですか。声も出ないようですし丁度良いかと思います」  おいおい、話の切り替えが速いな。そしてこのボロボロな俺に何をさせる気なんだ! 「そおね、それも面白いわね」 「とりあえず、この男にヒールをかけて治癒させましょう」  ヒールだと! この姫様、中二病か! 「あんまり動かれたり喋られたりしたらめんどくさいから軽く治す程度にしなさいよ」   「わかりました」 「それじゃお願いね、私はこの血を落としてくるわ」  こいつら本気かよ。  セシリアが部屋から出るとマリアが俺の股間に手を震わせながら当ててきた。ただでさえ血が足りないのに俺の息子は脈打ち膨らんだ。 「まあ! 膨らんだわ」  そりゃそうだろ。 「では子羊ちゃん、君を少しだけ治してあげるわ」  マリアの目が怪しく光りはじめた。 「人体を脈打つ流れよ、この男の体力、怪我を治し、なお且つ継続して体を動けなくし声が出ないようにしたまえ、セレクトヒール」  あ~ なんだか体がかるくなってきた。それにこの光はとても暖かい。マジで魔法なのか? 痛みも無くなり体の細部まで治癒したのが解る。だが依然として声は出ないし体は動かない。 「それじゃ少し寝てなさい、後で食事と服を持ってこさせるわ」  マリアの声がだんだん遠くなっていった、そして俺は急に脱力感に襲われ深い眠りについた。    
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