9人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ
兄弟
必死に笑いをこらえている佐山さんの前には葉奈と、新太くん。
仲睦まじく、一緒に宿題をやっている。
新太くんは、勉強ができるようで、葉奈に熱心に勉強を教えている。
「葉奈ちゃん、だからね、答えは3番なんだよ? 分かった?」
「へぇ~。そうなんだ~。でも、それって何の役に立つの?」
突拍子も無いことを聞かれて、困った新太くんは僕に助けを求めてくる。
葉奈……。新太くんを、それ以上、困らせるな。
この二人は、同級生だったらしい。
僕は、今日、初めて知った。
今日、葉奈が、佐山さん宅に、現れたのも、同じく新太くんに、誘われてのことだったらしい。新太くん……優しいんだな。
「学くん、煎餅作ったんだけど、食べる?」
佐山さんが作ったものを、食べられるなんて、嬉しい!
じゃなくて、セ・ン・ベ・イ?
「佐山さんは、お、お、お煎餅を、作れるの?」
佐山さんは、僕の反応を見て、ふふふと笑って言った。
「知らなかったの? 家、煎餅屋だよ? 知らない? 佐山煎餅。あと、『佐山さん』だと、ややこしいから、優梨って呼んで」
えっ……。女の子を、下の名前で呼ぶなんて……。経験なくて、緊張する。
この夏は、僕にとって忘れられない、夏になった。
なぜなら、浮かれすぎて、課題が全く終わらなかったからだ……。
最初のコメントを投稿しよう!