忘れられない夏

幸運にも……

「新太くんは、佐山さんの弟？」
　僕の、この声で、初めて佐山さんは僕の存在に気がついた。
　逆を言えば、それまで気づかれなかった……。

「あっ、確か、君は……」
「新田学です。同じクラスの」
　名前、知らないって、言われたらかなりショックだから、先に言っちゃったよ……。
　佐山さんは、「そんな、食いぎみで言わなくても知ってるよ。」と笑って言っていたが……。
　それから、佐山さん兄弟は僕にチョコバナナの、お礼を言って帰っていった。礼儀正しい、兄弟だな。

　少しは勇気出せよと、思われるだろうが、それが僕だ。
　でも、できることはした。
　聞いて驚くなよ……。
　来週、佐山さんの家に行く約束をしました！
　まぁ、詳しく言えば、新太くんが、「家に来て一緒に遊ぼ。」って誘ってくれただけなんだけどね。
　嬉しかったんだ。