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会いたくないヤツ
夏祭り、と言うものは、会いたくない人にも、会ってしまうところである。
そのことを、僕は、すっかり忘れていた。
「新田、えらい、かわいい子連れてるやん」
後から、そう、声を掛けられた。
聞き飽きた、ハイトーンの声。
振り返らなくても、分かる、あいつらだ。
あー。面倒だ。こいつらに、見つかるとは、運悪すぎ。
こいつらは、うちのクラスのボス的存在の、グループ。
田中を筆頭にしているから、タナカーズと、言うらしい。
当然、自称である。
実際に呼ばれているところを見たことがない。
この、タナカーズは、気に入らないやつの、粗を探して騒ぎ立てることを趣味としている。悪趣味を絵に描いたようなグループ。
なぜか、僕はこの、タナカーズに、目をつけられていて、普段から、うっとうしい。
「妹だよ」
簡素な一言で、その場を去ろうとしたら、写真を撮られた。
今時のスマホって便利だけどこういう時、めっちゃうざい。
「肖像権……」
小声で反論したら、「お前なんかに肖像権ない」と言われた。
こりゃ、日本国憲法もビックリだね。
気に入らない奴には、権利ないなんて。
じゃあ、こっちも同じ手を使わしてもらおうかな。
「葉奈、どうする?」
とりあえず、僕の後ろに隠れていた葉奈に、聞いてみたが、首をかしげて、田中達に、「お兄ちゃんの、お友達ですか?」と聞いた。
何を聞いているんだ? どうみても、友達じゃないだろ?
リーダーの、田中がニヤニヤ笑って、「そうだよ。お兄ちゃんの、お友達♪」と言った。
うわー。ヤなやつ。
めっちゃ、嘘つくやん。
今度は葉奈が、ニヤリと笑って、「お兄さん達、お兄ちゃんの、友達じゃないでしょ?」と言った。
田中達が、「はぁ? 何言ってんだ?」という顔でお互い顔を見合わせている。
「だって、お兄ちゃん、友達いないもん」
事実……いないけどさ、軽く暴露するなよ……。
聞いた意味ある? 暴露したいだけだろ。
もうこの際、いいか。気に入らない奴なら、法に触れないらしいし。
「葉奈、頼んだ。」
それからの戦いは、すごかった。
小3女子(浴衣)対 男子高校生三人(私服)
普通に考えたら、葉奈が勝てるわけがない。でも……
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