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戦後
「お兄ちゃん、かき氷食べたい」
葉奈が、甘えた声で、ねだる。
何も言わずに、かき氷屋の屋台に近づく。
「イチゴ味だよ。ブルーハワイじゃないから」
頑張ってくれたお礼に、それくらい買ってやろう、という気になっていたのに、なんか、気がなくなる。
いたずら心が、芽生えた。
無言で、ブルーハワイの、かき氷を渡す。
これでどうだ。
葉奈は、うつむいたまま、ブルーハワイのかき氷を、受けとる。
やっぱり、まずかったか?
心配になって、「ほら、イチゴのかき氷。僕がブルーハワイ食べるから」と、言ったら、葉奈が、くっくっくと、笑った。怖っ!
「高校生になっても、まだイチゴのかき氷? かっわいいー」
こいつは……。
すぐに機嫌が直って、意地悪してくる。
こっちが、疲れるよ。
でも、そんな妹を、僕はまあまあ、気に入っている。
妹に、気に入るも何もないが、なんだかんだ言って僕には、この困った妹が必要で、葉奈には、僕のような硬い兄が必要なのだろう。今は……。
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