庭よりの援軍

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22 ふさぎ込んでいたアンの心は、すっきり、洗い流されたように晴れ渡る。 オーガストのひどい態度も、不名誉な噂に怯える気持ちも。 何もかもが綺麗に消え去っていた。 かすかな笑みをたたえながら、アンは首筋を伸ばして館に向かい歩いて行く。 そして、フランス窓のあるテラスへと、階段を上がるアンの目の前に現われたのは、なんとあの「気難し屋」の姿だった。 オーガストが、アンへと視線を向ける。 そのストロベリーブロンドの髪には、星の形の白百合が煌めいていた。 オーガストが目を瞠る。 「ミス・メレディス。その花は庭で? よくその百合を見つけられたな」 あら? このお花って、なにか、それほど特別なのかしら。 アンは、オーガストの反応にこそ面食らった。 早足で庭を歩いてきたアンの頬は、上気して薄桃色に色づいている。 そのせいかデコルテの白さが、ひどく際立っていた。 後れ毛が細いうなじに乱れかかって、いつもとは違う、隙めいたものも醸し出されている。 それにしても―― 「髪に花を飾る」だなんて。このガヴァネスが、そんな娘らしいことをするとは。 なかなかに驚きだ。 そんな事々を思いながら、オーガストはアンを見やった。 髪に挿した百合を確かめるようにして、アンがそっと、自らのおくれ毛に触れる。 ほっそりと長い指。爪は、透明な桜色だった。 その、ひどく無垢な色合いは、まるで、男が不用意に見てはならぬものであるかのように思えて。 オーガストは、少したじろいだ。 「……伯爵?」 アンが怪訝そうに小首を傾げる。 オーガストは慌てて言葉を続けた。
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