引きこもりと変わり者

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そのとき、たくさんの花が宙を舞った。 「それー」 間宮はまた持てるだけの花を抱えると 俺の真上の天井に向かってふわっと優しく投げる。花は、俺を包み込むように 優しくひらひらと落ちた。 何これとつっこみたくなったが 間宮が何故か真剣な様子で何度もそれをやるので、なにも言わずに見ていた。 じっと見ているうちに、ふと綺麗だと……思ってしまった。 その時 あの時のトラウマがよぎった。 同じ光景だ。けど、違う。 間宮は、言った。 「再生するんだよ」 「再生…?」 「あの時のバラバラになった写真は、そのぶんだけ花になって、今から再生するんだよ」 「再生…」 「ダイヤモンドリリー。この花の花言葉は、再生なの。加藤の側でたくさんふらせれば 加藤は再生してくれると思って、持ってきた。加藤に幸あれ!」 そう聞こえ ひらひらと俺の目の前に、花が舞う。 トラウマと重なって、それが優しく心に溶けていく。 「加藤に幸あれ!」 花を俺に向かって、間宮は優しく 真剣にふわっと投げ続ける。 俺は、それを黙って見ていた。 トラウマの写真は、綺麗な花になって そして、俺はこの変わり者の優しさが分かった。 間宮は、変わり者。 そんなやつの側にいるから、移ったのか 「間宮」 「ん?」 「…ありがとう」 その時、俺は間宮の変な行動で 不覚にも、涙がひとつこぼれた。
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