もう、止めよう。

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 コンテストの舞台に上がる前に確認した全身鏡には、セミロングまで伸ばされた髪をゆるく巻いて、ちょこんとリボンを付けたあざとい髪。唇プルプルにされて、ファンデーションだか塗られて、小綺麗になった俺の姿が映されていたんだ。その容姿は自分で見ても「女」にみえた。  俺は顔もさることながら、身長も平均くらいしかないから背が高めの女子にしか見えない。肩幅が少し気になる所だが、そこはオーバーサイズのセーターを羽織ることで緩和され、女子にしか見えない俺がいた。  正直、「あれ、コレはイケんじゃね」と自分で思ってしまったことが一番ショックだったよ。 「いいじゃん、なんだかんだで先生たちも認めてくれたし。今後の学校生活もコレで行っちゃおうよ」  クイっと閉めていたネクタイを緩めながらいう彼女は、正直俺よりカッコ良くてムカつく。喉仏はないが、中性的な彼女は格好によって女にも男にも見える彼女は「カッコいい」。俺の制服を着ても違和感がないくらいには、似合っている。  あと、文化祭前から宣伝のためという名目も込めて、お互いの制服で学校生活を送っていたりする。そう、制服交換の件は学校に確認して許可は貰えてしまった。  俺は強制的に制服交換させられたから強引に直談判しに行ったのだが、むしろ「この格好でも違和感ないし、このまま登校しても良いんじゃないか」と先生自ら進めるくらい、俺たちはお互いの制服が似合ってしまっているらしい。「似合ってたら良いのかよ」と思わず先生に突っ込んでしまったけれど。  
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