白の試験者

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 だが、すぐに自分が駄馬であると宣告されるのではないかという不安が戻ってきた。世界を救うという、人々に福音をもたらすという私の目標はここで潰えてしまうのか。  とりあえず腹が空いたので目についた蕎麦屋に入った。  天ざると行きたいところだったが懐が寂しく、もりそばを頼んだ。立ち食いという訳ではないので暫し待たされたが、綺麗に盛られた蕎麦が出てきた。  するするとのど越しのよい蕎麦である。ずずっと啜りながら私は、蕎麦の事を思った。  痩せた土地でも栽培が出来、発芽も早く収穫まで三か月程度という食物としては非常に優秀な蕎麦は、綺麗な白い花も咲かせる。素晴らしい植物ではないか。この蕎麦のようにありたい、人々の為になりたいと私は思うのである。  誠に美味い蕎麦であった。  私は先ほどの不安を綺麗に払拭して、クリニックに戻った。根拠のない自信は私の長所である。
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