白の試験者

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 世の為ひとの為、私の精子が世界を駆け巡り、新しい生命を育み、子ども不足を防ぐ礎となる。同性婚の女性たちにも子どもが生まれる。なんと素晴らしい社会貢献であろうか。  世界の人々の(実質的な)父となる。ちょっとSF的でわくわくするこの考えに、私は夢中になった。  話によると、まず精子が健康であるかを調べなくてはならないそうだ。ヒトとしての個体が健康でも、生活習慣や様々な要因で精子が不健康だったり、少なかったり、或いは無精子病という恐ろしい病気だったりするようだ。もし無精子であったのなら、今までの我が右手の孤独な運動は、射出された幾千、幾万の白い液体達は何だったのだという事にもなろう。それこそ徒労というものだ。由々しき事態である。
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