6人が本棚に入れています
本棚に追加
看護師氏(繰り返すがなかなかに美しい女性である)はやはり事務的にそう言い、入口の方を手で促した。「はい」とか何とか、答えて私は待合室に行った。
待合室には私以外に二人ほど、男性がいた。私よりも高齢に見える落ち着いた紳士と、まだ若そうなイケている営業マン風氏であった。
みな「採精」をしていたのかと思うと不思議な気分になった。この中に私よりも更にサラブレッドがいるのかもしれない。そう想うと私は自分が駄馬であった場合の不安にかられた。落ち着かない。紳士も営業マン風氏も私を鼻で笑っているかのように見える。
いたたまれなくなって、私は受付の方(こちらもなかなかに美しい女性であった)に外出する旨を告げ、クリニックの外に出た。三十分ほどで戻るようにと言われた。
外は日差しが眩しかった。
何か大きな仕事をやり遂げたかのような感覚があった。
最初のコメントを投稿しよう!