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1 川田
コンビニでアルバイトをしようと思い、面接に行った。ちょっと緊張したが、店長が優しげなおじさんで、安心した。
家から自転車で15分。そこそこ近くて、そこそこ遠い。いい距離だと我ながら思う。早速明日から、夕方のシフトに入れて貰えた。ラッキー。
翌日の夕方、制服のシャツを着て店に出た。
「あれえ?へえ~目付きわるいねえ、君」
やけに整った顔の先輩に絡まれた。アンラッキー。
「よろしくお願いします」
「はいはいよろしくね~」
フリーターか、20代…前半?大学生だろうか。
「坂上圭でえす、圭ちゃんって呼んでねえ?」
「とりあえず、仕事教えて貰えますか?坂上さん」
「うん、圭さまでもいいよ~」
なんだか軽い人だな。金髪だし。
「とりあえずレジしてえ、品だしする~?」
「はい」
「川田くんさあ、なんか真面目~?」
確かに。よく堅物と言われる。
「川田くんさ~、趣味なにい?」
…趣味。
「読書とか、ですかね?」
「うわあ、見た目厳つくて怖そうなのにい、ギャップ萌えかあ」
失礼な人なのか。あまり関わらずにいたいな、とちょっと思ったら、
「川田くんさあ、オレみたいの…キライ?」
たれ目を細めながら言われ、少し驚いた。表情に敏感な人なのかも知れない。
「嫌いではなく、苦手ですね。周囲にはいないタイプでしたので」
正直に言ったら、雰囲気が和らいだ。少しホッとして、息を吐き出す。
「そっかあ、オレここ週三だからさあ、まあちょくちょく会うかもねえ、仲良くしてね~」
「はあ、よろしくお願いします」
よく分からない人だ。まあ、世の中色んな人がいるからな。
アルバイトにもだいぶ慣れたが、慣れないのは坂上さんだ。何故だかあれから、シフトがよく合う。
「なんかさあ、オレ友くんと運命感じちゃうよ~。シフト全部さあ、友くんと被ってんだよねえ」
それは、確かにすごい運命だと思い、苦笑する。
「坂上さん、友くんは…ちょっと」
「友道くんでしょお?あ、ともみっちゃんがいい?」
究極…。
「友道では駄目ですか」
「やだなあ、恋人みたいじゃんかあ」
ケタケタと笑いながらも、坂上さんは手を止めない。
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