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客船J号は、その日の午後、R国のT港を出発した。
海上は凪いでいて穏やかだった。
が、空は、どんよりと曇っていた。
しかし、その日は〝快晴の特異日〞だったので、J号の船長は、不安を抱きながらも船を出したのだった。
目的は、F国のH港だった。
船室は満杯状態で、十数人の男の客は、それぞれ読書やゲームや雑談をして和合んでいた。
その1人のKは、悪友のPとポーカーをしていた。
その時、Pは窓外に目をやり、
「なーんか、イヤな空模様だな……」
しかしKは、のんきにカードを見ながら、
「大丈夫だろう……。きょうは特異日なんだから」
やがて仲間のWが、箱入りのビールを1ダース運んできた。
それを見た客たちは、一斉に集まり、取り合いになった。
KとPもポーカーを中断して、Wと一緒に飲みはじめた。
天気はいよいよ荒れはじめ、J号の揺れも大きくなってきた。
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