悪魔のイタズラ2 –客船J号奇談–

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 その空模様を見ながら船長は部下に、 「続行かどうするのか、ヤツに()いてこい」  部下は船室に急行すると、この旅の主宰者であるKに訊いた。  Kはビールを飲みながら、 「きょうは特異日。続行!」  それを聞いた船長は、一考し、 「念のため全員の救命具を用意しておけ」  そして前方の天候を見詰めて表情を曇らせた。  船室の方では、全員にビールが行き渡り、上機嫌だった。  船の揺れが一段と激しくなってきたので、ふらふらと立ち上がると、自己流のダンスを始めた。  KもPやWと適当に踊りだした。  しかし、全員で酔いながら踊っているため、混雑の中、自分の体を支えるために、両手を伸ばして近くの者の肩につかまることにした。  船の揺れは益々激しくなってきた。  船室の者たちは、それぞれ手でつかまり合っていても大変だと、今度は四つんばいになってウロウロ歩きだした。  そうやって歩きながらKは、鹿のように首だけ高く出して 「こんなことしてても楽しくないから、歌合戦でもしよう」  それに従うように、一人ずつ好きな歌を歌いだしたが、酔っているためと船の揺れで、まともに歌える者はいなかった。
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