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「マスター!? マスター!」
レイトは扉が閉まると同時に立ち上がった。扉のあった所に駆け寄ってドアノブを探すが、見当たらない。押し返してみても、びくともしない。
何なんだ、この状況は。
あの男、俺をチビだとバカにした挙句、意味不明な言葉を残して怪しげな小屋に閉じ込めやがった。
体をくれってどういう事だ? 死んだら成長がどうとか言ってたけど……クソ。こんなことなら、ディアンとバカトリオ(←NEW!)をまとめて連れてくるんだった。
考えててもしょうがない。それより出口を探さないと。
レイトは屋根の窓から辛うじて差し込む光を頼りに、部屋の中を見渡した。
今いる扉側とは反対側の壁際に、何かが置かれている。暗がりなので大体のシルエットしかわからないが、複数のモノがまばらに置かれており、形も様々。数は、いち、にー………………だいたい20個くらいか?
あれを上手く積み上げれば天井の窓に届くかも知れない。物は試しだ。
早速実行に移すべく、得体の知れないそれらに向かって歩き出す。目は少しずつ暗がりに慣れてきていた。他に土台になりそうなものが置いてないか、目を凝らして周りを見ながら、謎の物体たちに近づく。
向かいの壁との距離が3メートルくらいになり、それらの姿形が見えてきた時、レイトは目を見開いた。思わず足を止め、そこにあるモノたちから視線を逸らす。
今のは見間違いかも知れない。
そう思いながら、恐る恐る正面に視線を戻す。
荷物か何かだと思っていたそれらは、人の形をしていた。あるものは壁にもたれて座っていたり、またあるものは蹲っていたりと、様々な体勢で置かれている。服を着ているみたいだが、着ているものに統一性は無さそうだ。
ピクリとも動かない。あれは人形か? それとも死体……とにかく、生きてる何かには見えない。もし死体だったら積み上げたくないし、土台にしたくも
ない。でも、あれがただの人形とかなら全然問題ないわけで。
レイトは顔をしかめながら、一歩、また一歩と、それらと更に距離を縮め、その中の1つと手の届く距離にまで近づいた。腰が引けた体勢でそれの腕らしきものに左手を伸ばし、ちょん、と指先で触れてみる。
知ってた。こんなやり方で死体かどうかなんて、俺には判断できない。本当は触りたくないくらいだ。
待てよ? そもそも、これを死体だと思い込むのがいけないんじゃないか? 大体、死体だったらヤバそうな臭いがするだろうし、こんな綺麗な状態でここに放置されているのは変な話だ(放置に至っては人形も然りだけど)。
大丈夫、これは死体じゃない。死体じゃない。死体じゃない。
意を決して、もう一度手を伸ばす。広げた手を人型の腕に近づけ、今度はしっかりと掴んだ。
服越しに、ぐにっとした感覚が手のひらに伝わる。それを感じ取った瞬間、レイトの全身に鳥肌が立った。
考えるよりも先に慌てて手を離し、勢いよく後退る。しかし、距離を取ることは叶わなかった。
さっきまでピクリとも動かなかった人型の何かが、レイトの腕を力強く掴んだのだ。
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