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「なあ、俺マジで心配してんだよ。1人で村の外に出るってだけで危ねーのに、よく分かんねえヤツと関わるなよ。おじさんとおばさんに心配かけんな」
「つーかさ。森に行ってる事、ウチの親にチクるの止めてくんね? 帰って来るといつも怒られる」
「行くなって言ってんだよ!」
友人はレイトの頭を思い切り叩いた。頭を押さえて痛がるレイトを睨みながら、一気に責め立てる。
「はーーーっ! お前が強いのは知ってっけど、調子に乗ってんじゃねーよ! バカなの? もしかして、やたら強えーのはバカだからか? 馬鹿力と掛けてる? バカってみんなそうなの?」
「バカバカうっせーな。あと俺が強いのは、センスがいいからだ」
「その理由、すげーうざいから今すぐ止めろ」
ニンマリと得意げな顔をするレイトに、友人はとうとう呆れた目を向け、深いため息をつく。
「ソイツん所、また行くのか?」
「おう」
「あーあ…………庭の草むしり、手伝ってもらおうと思ってたのにな。その後、家でジュースご馳走しようと思ってたのになー」
「わかった。草むしりだけやってやる」
「いい奴かよ」
「草むしったらソッコーで出かけるから」
「は? 何がなんでも我が家でリラックスさせて、出かける気力削いでやる」
「何のサービス?」
友人の謎のおもてなし発言に、思わず笑みを浮かべるレイト。つられて友人も顔がほころぶ。
「お前のために愛を込めてトマトジュースを作ってやろう。トマト好きだろ?」
レイトは鼻で笑い、友人の見解を否定した。
「残念。俺が好きなのはミニトマト」
「どっちも変わんなくね?」
「全然違うから。つーか仮にもトマト栽培してる身だよな? 逆に気にしろ」
レイトと彼の友人は、談笑しながら足並みを揃えた。
――今思えば、昔はよく笑っていたと思う。
友達とバカな事して遊ぶこともあれば、近所の家に手伝いに行く事もあった。村の人はみんな気前が良くて、困ったことがあれば助けてくれる。
家族とも穏やかな時間を過ごしていた。
父さんと母さんとで、狭い食卓を囲む時間は居心地が良かった。お隣さんの誕生日を祝いに行ったら力自慢の薪割り大会に巻き込まれたとか、椅子取りゲームで勝ち残ったのに景品がイノシシの抜け毛だったとか、両親が持ち帰って来るのはくだらない事件の話ばかりで、かなり笑えた。
そういえば俺がミニトマトが好きだと知った次の日に、ミニトマトの栽培を始めたんだよな。いつからか、かなりの頻度で食卓に出るようになってた。
もちろん、楽しいだけじゃなかった。昔からやんちゃする事が多くて、よく叱られた。煩わしいし放っておいてほしいと思ってたけど、今ならあれも愛情だったとわかる。どうしてかって、それはまあ、何となくだ。
魔物に村を襲撃されることを除けば、この生活に不満は無かった。
毎日、充実してたんだ――
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