レイトの告白

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「その指輪をはめると、触った物を異空間に収納できるんだ。もちろん、発動するのは使用者が望んだ時だけだし、取り出すこともできる。用途はポーチやリュックと一緒だけど、重さも大きさも関係なく入るから、持ち運びに便利でしょ?」  男は、地面に突き刺さったままのハルバードを指でコツコツと叩いた。 「これ、ずっと持ち歩くの大変だろうと思ってね」  そう言って微笑む彼は "優男" という言葉が本当に似合うなと、口にはしないが、レイトは常々思っていた。しかし、こういう……魔物に遭遇するリスクを伴う場所でしか姿を現さないせいで、村の人からはあまり良い目で見られていない。余所者(よそもの)だからと言うだけで、その人の価値を決められてしまうのが不服だ。  レイトは指輪を(つま)むと、どの指に着けようかと、親指から順に指輪を着けたり外したりし始めた。 「……なあ、村に来いよ。お前、ひねくれてるけど良いヤツだし、みんなも受け入れてくれると思う」  まず指輪のお礼を言うべきなのだが、さっき怒った手前、素直になれない。目を合わせるのも何だか気まずい。 「前にも話したよね? 魔物の研究に絡んでると、魔物に狙われるリスクが大きいんだ。だから他の人を巻き込まないように、なるべく人と関わらないようにしてるんだよ」 「俺とは会ってるだろ」 「え? だって君が会いたがるから。だからこうして、仕方な~く来てあげてるでしょ?」 「何その言い方。俺だけ会いたいみたいじゃん」 「うそうそ。僕も会いたいよ」 「……ふーん」  レイトは左手の親指に、ブラックリングをはめた。手を裏返したり、握ったり広げたりして、指輪を眺める。  何も言わなくなったレイトに、男はニヤニヤと頬を(ゆる)ませた。 「あれ? もしかして照れてる?」 「は!? 照れてねーし!」  レイトがムキになって否定すると、今度は男が「ふーん?」と、にやけたまま鼻を鳴らした。 「まあでも、村に……というか、親御さんに挨拶しに行った方がいいのかな? 知らない人と会ってるって、かなり心配させてるだろうし……あれ? 親御さんには僕のこと話してるんだよね?」  男が問いかけながら、レイトを見る。不機嫌だったレイトの表情はいつのまにか明るくなっていた。 「村に来んの!? それなら早く行こう!」  レイトは男の問いかけを無視し、地面に刺したハルバードを担いで、男の腕を引っ張った。打って変わって嬉しそうに歩くレイトに内心驚いていた男だったが、自分の手を引く青年の後ろ姿に微笑みを浮かべる。 「唐突だなあ。さっきまでプリプリしてたのに」 「どうでも良くなった。そうだ。指輪の使い方、教えてくれ」 「いいよ。でも先に、親御さんへの挨拶を考えさせて」 「そんなの適当でいいんだよ」 「そういう訳にはいかないよ。とりあえずお礼は言いたいよね。 "こんな面白い子を産んでくれてありがとうございます" って」 「それは()らない」  軽い足取りのレイトと、レイトに引きずられて連れられる男。2人は村へ向かうべく、森を抜け出した。
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