レイトの告白

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 村を目指す道中、レイトは貰った指輪の使い方を教わったり、男が両親への挨拶を考える相談を受けたりしていた。自分の隣を歩く男は、村へ近づくにつれ、心配そうな表情になっている。 「どうしよう。だんだん不安になってきた。ねえ、村の人たちからタコ殴りされたりしない?」 「野蛮民族じゃねーから。話せばわかるし、タコ殴りは村を襲ってくる魔物にしかしねーよ」 「ほら、やっぱり」 「どこが "やっぱり" ?」 「僕、人見知りだし……ご両親への挨拶も、命乞(いのちご)いも初めてだ。緊張しちゃう」 「へえ、俺もお前の命乞い見るの初めてだ。楽しみー」  そろそろ男の相手をするのが面倒になり、適当に流すレイト。ただ、男が逃げないように彼の腕をしっかり掴んでいた。隣から小言が聞こえたような気がしたが、軽くあしらいながら、遠くに見える自分の村へ視線をやる。  村の上空に、何かが見える。  人と同じくらいの大きさのモノが5つ。それらが空から……降ってきた? それにしては落ちるのが遅い。舞い降りた、というのがしっくりくる。  それらのうちの1つを、目を凝らして観察する。人の形をしているようなので、獣の(たぐい)じゃない。翼は見えるが、天使のような幻想的なモノでもない。  たぶん、今まで村を襲ってきたヤツらとは比べ物にならないほど、(たち)の悪い相手だ。  レイトは、逃げないようにと掴んでいた男の腕を離した。 「やっぱ、お前来んな。すぐ帰れ」 「僕をタコ殴りから守ってくれるの?」 「タコ殴りより酷い事になる。いいから村には来るな」 「えっ、どういうこと?」  戸惑う男を置き去りにし、レイトは一目散に走り出した。  全速力で走る最中、村から黒い煙が立ち上った。急がなきゃいけないのに、いつもより息切れが早い。帰り道がこんなに遠く感じるのは初めてだ。  "村のみんななら大丈夫"  そう信じていたかったが、嫌な予感がする。  心臓が痛い。  だけど今は、走り続けるしかない。  村に建っている家が何軒か見えてきた。黒い煙の発生源は家の中からだ。視界にある全ての家が屋根や壁を破壊されており、炎が見える。もしかしたら他の家も……  レイトは走りながら左腕を横に伸ばし、手を広げた。指輪に収納していたハルバードが、手元から瞬時に現れる。その柄を強く握りしめ、村へ急いだ。  村の状態は悲惨だった。  どの家も燃え盛っており、庭や畑は荒らされている。しかし、人の気配がない。声も聞こえてこない。敵襲をいち早く察知して、もう村を脱出したのだろうか。そうであって欲しい。  でも、この目で確認しておかなければならない場所がある。  散乱した農具。崩れ落ちた家の瓦礫(がれき)。村を構成していた物が通り道を(はば)む中、それらを避けながら走り続けた。  炎に包まれて見晴らしが悪くなっているが、だんだん目的地に近づいてるのが分かる。あの家の(かど)を曲がった所にあるはずだ。あともう少し。  更に速まる鼓動。一刻も早く、と気が()く。曲がり角に差し掛かるところで強く踏み込み、小回りで曲がった。  ようやく辿り着いた。レイトは呼吸を整えながら、自分の家の損傷を観察する。  壁に1ヵ所の打撃痕があるだけで、他の家より被害が少ない。  中の様子を見ようと歩き出したが、すぐに足を止めた。  玄関から誰かが出てくる。
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