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関係ないんでしょ?
一方その頃。ほったらかし状態の魔物トリオは、小屋の4分の1を占める死体ふれあい広場で過ごしていた。
アヴィとパルグルは死体の頭を首からもぎり、3メートルほど離れた場所で積み上げ作業をしているビルにパスする作業をしている。ブチブチちぎっては投げ、ちぎっては投げ、を繰り返す。マッチョとかいうレベルじゃない。
生首を受け取ったビルは、それをピラミッド型に積み上げている。生首ピラミッドの下には、魔法陣――光を帯びた円状の模様が描かれていた。
ビルは手に持っていた首を積むと、「ふう」と手の甲で額の汗を拭う仕草をし、2人を見た。パルグルが最後の1体を処理しており、アヴィは手が空いている。
「アっくん。マスターの首、持ってきてくれる?」
「マスター……ああ、あの男の。どこにあるんです?」
「あっちだよ」と、その方向を指さす。了解の返事をしてその場所へ向かうアヴィに、小さく手を振った。
そろそろ、パルグルから処理中の首が送られてくる頃合いだ。
ビルはアヴィの後ろ姿を見送った後、振り返って受け取るポーズを取った。
「えっと……パルパル。それ、ちょうだい?」
ビルは視線を落とし、片脚重心で立っているパルグルの足元を見た。パルグルは今し方ちぎったであろう生首を、足の裏で前後に転がしている。
「欲しいなら受け止めてみろよ。オレはそのタワーに狙いを定める」
「タワー?」
ビルはキョトンとした顔で、パルグルの視線に注意を向けた。自分の背後にあるものの事だとすぐに理解できた。
パルグルは足を止め、生首を転がすのをやめた。
ニヤリと笑いながら生首から一歩下がると、左脚を軸にし、右足を後ろに引いた。シュートの準備は万端である。
「積み上げたもんは壊すのがセオリーだろ?」
「ちょ、やめてよ! せっかく作ったのに!」
ビルは眉間にしわを寄せ、胸の高さで両手を構えた。
突然始まった3メートル距離のPK戦。パルグルとビルは睨み合い、互いに動きを探り合っている。
「……あの、首持ってきましたけど」
生首ピラミッドの近くまで戻って来たアヴィが、慎重に尋ねた。2人の間で何かが起きているのは悟っていたので、彼なりの配慮のつもりだろう。
「アヴィ! そのボールでタワーを壊せ!」
「ダメだよアっくん! おれの努力の結晶なんだから!」
2人の必死の訴えから、 "タワー" の攻防戦と推測するアヴィ。それらしいものが無いか、周りを見渡した。
しかし、あるものと言えば、生首ピラミッドだけ。しかも1段目が4×3、2段目が3×2の2段ピラミッドだ。タワーと呼べるような高さでもなければ、努力の結晶と言えるほどの構造でもない。ついでに言うとボールも無い。
アヴィは考えるのを止め、背の低いピラミッドの頂上にマスターの頭を乗せた。
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