プロローグ

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プロローグ

 天井の高い講堂内に、数十人の若き騎士達が胸を張って整列していた。  皆一様に、正義と名誉を胸に瞳を輝かせている。  その視線の先ーー講堂の最奥に設けられた演壇では、ルーフス帝国の騎士団長アデルヴァード・グレンフィルが、騎士等への祝辞を述べていた。  帝国が保有する最大戦力である騎士団。  グレンフィル騎士団長は、いくつかの部隊に分かれている騎士を統括して指揮する、軍のトップだった。  その肩書きに相応しい屈強な体躯、燃えるように赤い髪と鋭利な緑眼は、その場にいる全ての人間の視線を集めて離さなかった。 「諸君、騎竜隊(カヴァレリー)への入隊心よりおめでとう。厳しい訓練を乗り越え、よくぞここまで成長した。私の誇りだ」  若者の英気を底上げする事になれている口調だった。 「我が隊は、リオレア大陸最大の戦力である。中でもワイバーンに騎乗し、空から敵を殲滅する騎竜隊(カヴァレリー)は、騎士団の(かなめ)だ。  その一員になったことを誇りに思い、帝国とウィリアム皇帝陛下への忠誠心を以て任務に邁進(まいしん)してくれたまえ」  騎士団長の背後にたたずんでいた皇帝ウィリアムは、腕に抱えた一人娘と共に前へ進み出た。  線の細い、青白い男だ。 「君たちの変わらない忠義に感謝する。どうか我が国を守っておくれ」  国の二大巨頭からの言葉に騎士達の志気も高まるが、新入隊員の一人であるヴァレンタイン・グレンフィルだけは、憮然(ぶぜん)と壇上を見上げるだけであった。  その名の通り、彼は騎士団長の実子である。  恐らくこの場にいる誰もが知っているはずだ。  他人からすれば羨望の対象だが、本人にとっては呪いに近かった。
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