1 要

2/8
208人が本棚に入れています
本棚に追加
/36ページ
ウィンクをし、小さそうな厨房にチーズー!と叫ぶママ。キープボトルを目の前に、どかりと置いてきた。 「なんだか要ちゃんたら、顔色悪くなあい?」 言われて自分の顔を撫でる。 「そうかな?元々青白いし、気のせいだよママ」 にっこり笑いかけたら、ママは頬を両手で挟んで可愛い~!なんて言ってきた。 確かに童顔だけど、可愛いはないよな。苦笑し、ママが氷を入れたグラスを差しだすのを受け取った。 背も高く、筋肉質なガタイの良いママ。顔も男らしく、彫りが深い。 沖縄方面なのかな?なんて思いながら、グラスに酒を少しだけ注いだ。 毎回濃さを変えるから、酒を注ぐのは自分でしている。 ママが水を注いで、マドラーでくるりとかき混ぜてくれた。 「ママも飲んでね」 「ありがと~、頂くわあ」 グラスを合わせて、焼酎の水割りを口にする。 「あ~!ママだけずるい~!あたしも要ちゃんと飲みたい~」 背後からしなだれかかる、化粧の濃いお姉さま。胸が背中に当たるのは、わざとだろう。 「また胸が大きくなった?」 振り返り聞いたら、嬉しそうに両手で胸を寄せて持ち上げてきた。 「いいでしょ~、要ちゃんなら触ってもいいわよ~?」 遠慮して、好きなものを頼んでいいよ、と言いながらママを眺める。 腕についている筋肉の動きが艶かしい。太い首から、腕に流れる筋肉を想像して笑みを浮かべる。 裸が見てみたい。 じっと眺めていても、笑顔を絶やさないママ。客商売でも、こんなにじっくり眺められたら…嫌な気持ちになるかな。 「要ちゃんたらまた~!すぐママばかり見るんだからあ」 言われて、グラスを手にするお姉さまに視線を向けた。 むき出しの肩に目が行く。薄い皮に包まれた、骨張った肩。偽物の胸の膨らみよりは、魅力的。 「だって、好きなんだ」 あの体。 「ママ~、要ちゃんたらまぢ告りだよ~!羨ましいなあ」 「まだまだ私も、捨てたもんじゃないわね~!」
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!